昭和の「まじめ」

阪大へ就職してひと月ほどした五月ごろ、言語文化部が教養部から独立した十周年祝賀パーティーというのが開かれて、生協の二階の食堂に集まった。私らみなスーツにネクタイ姿だったが、一人だけ、ネクタイをしていない40代くらいの教員がいた。ヨコタ村上ら30代半ばの連中が、ひそひそと、あれはどうなんだ、などと話していて、ヨコタは50代くらいの教授に文句を言ったりしていた。冗談めかしてではあったが、変なことにこだわるやつだと私は思った。「(彼は)くそまじめだから」と言う人もいたが、男女問わず性的な話をしかけ、女性職員に酔って「あんたとセックスしたい」とか言い、女子学生を研究室に連れ込んでセックスしてしまうこの男は、なるほど「昭和のまじめ男」なのだなと私は今にして思うのである。