ボウルズとカミュ

文學界』八月号の最後のページの連載随筆で、松浦寿輝が、二つの西洋の短編が似ているという話をしている。ポール・ボウルズの「遠い挿話」(1945)とカミュの「背教者」(1957)で、前者は四方田犬彦訳『優雅な贈り物』に、後者は窪田啓作訳『追放と王国』の中に入っている。どちらも、北アフリカへ踏み入った西洋人男性が、舌を抜かれるという話だが、ボウルズのほうはそのあと見世物にされるが、カミュのほうはそれ以外にほとんど筋がなく詩的散文で埋まっている。なんとなく、あとから書いたカミュが真似をしたんじゃないかという気がする。カミュの短編は初めて読んだが、退屈だった。

 手塚治虫にもこれに似た作があり、アフリカで先住民に苦い薬を飲まされた日本人男性が、逃げ出しはしたが姿がオランウータンになっていたというものだ。