林真理子「奇跡」の真実

林真理子の書下ろし『奇跡』が売れている。田原桂一(1951-2017)という写真家を私は知らなかったしこんな事件ももちろん知らなかった。あと博子までは実名なんだが、歌舞伎役者は、関係ない勘三郎まで仮名になっていて、仁左衛門、孝太郎、千之助は清左衛門、清十郎、清之助となっている。

 孝太郎の妻であった旧姓・向後博子(1970- )が、20歳年上で妻もいる国際的写真家の田原(たはら)と愛しあうようになり、孝太郎には女性問題もあり、息子の千之助は田原が借りたマンションで母と田原と過ごす時間があって、それが「聖家族」のように描かれ、孝太郎との別居が十年にも及び、ついに離婚して、妻と別れた田原と結婚するが、田原はガンに侵されていて、一度は快癒するが再発して65歳で死んでしまうという物語のような実話である。林は、青山あたりの、自分の子供が通う学校で、子供の年が違うママ友同士として博子と知り合い、実名で書いてくれと言われたというが、それは田原と自分の実名ということだろう。確かに私も田原を知らなかったから、こちらが書かれていなければ分からなかっただろう。

 だがそれも、田原と博子にしか話を聞いておらず、孝太郎にまったく話を聞いていないから、すごく一方的な感じになってしまっている。よそでは「千之助の母は」などとして報道されているが、孝太郎の女性問題はそんなにひどかったんだろうかというもやもや感がかなり残る。