ヴィクトール・ユゴー 言葉と権力: ナポレオン三世との戦い (西永良成) (平凡社新書 アマゾンレビュー

 女ぐせの悪さが書かれていない
星2つ -、2021/12/10
新書版なので、ユゴーの伝記として読む人もいるだろうが、伝記としては勧められない。政治的な側面を、ナポレオン三世を悪玉として描いているが、妻のほかに公然と愛人を作り、ガーンジー島流刑中にも息子の恋人を奪い、次女アデルは恋のため気が変になって北米へ渡ったといった私的なことがらが書いていない。また死刑廃止論について礼賛しているが、ユゴーの『死刑囚最後の日』は、死刑囚が何の罪を犯したかまったく書いていない不誠実な書である。なお著者はちゃんと書いているが、ユゴーは中途までナポレオンとボナパルト家崇拝家であり、ガリバルディのような共和主義者だったかは疑わしい(ベートーヴェンほどの見識もなかった)。あと参考文献に辻ひかるの伝記がなかった。