中国の恋のうた――『詩経』から李商隠まで (岩波セミナーブックス ) 川合康三・アマゾンレビュー   


男の片思いはやはりないか
星3つ 、2021/11/25
岩波のセミナーで語った内容なのでですます調。まえがきで、丸谷才一の『恋と女の日本文学』を名著としているがそれは疑問だが、丸谷が推して読売文学賞をとった張競の『恋の中国文明史』が無視されているのは意図的か。チャイナ文芸に恋のものは少ないと言われるが、『詩経』国風にはある。そこから六朝詩、李商隠と紹介していくが、『遊仙窟』を「下品なポルノ小説」(152p)と切り捨てているあたりは、おおやはり儒教道徳がしみついたチャイナ文学者だとのけぞった。チャイナ文芸には、男の片思いを述べた詩や小説が欠けていて、もっぱら相思相愛の才子佳人もの、ないし女の閨怨が主である、ということが改めて確認できた