凡庸でないと嫌われる

綿野恵太君の新刊『みんな政治でバカになる』をざっと読んだ。綿野君と私は、天皇制反対で九条改憲論という立場をともにしているが、綿野君は前者は前著で明らかにしたが後者は著書ではまったく言わない。この立場は嫌われるからで、孤立するからである。私も、もし九条護憲論になったらツイッターのフォロワーは一万人を超えるだろうと思っている。

 嫌われても本が売れたらいいが(ビートたけしのように『だから私は嫌われる』と言いつつ実は嫌われていなかったり、『嫌われる勇気』みたいに実際には嫌われていないのもある)、普通は嫌われると本が売れないので、綿野君も自分の政治思想は出さないように苦労して本を書いている。

 考えてみると日本は政治的には特殊な国で、天皇制廃止と九条改憲というのは別に矛盾するわけでもないのだが、こういう正しい立場をとると孤立してしまう国というのは見渡したところ見当たらない。日本では多くの人が、「容天、九条護憲」という凡庸な立場へ、仲間を求めてわらわらと入ってきているというのが実情である。

 綿野君の本は抽象論が多くて難しいのだが、それはこういう、ホントのことを言うと嫌われるという理由によるとお察し申す。