「勝手にしやがれ」の思い出

 

 

 

1987年の10月1日、私は比較文学の院生一年目だったが、有楽町スバル座ゴダールの「勝手にしやがれ」と「気狂いピエロ」二本立てをやっていたから観に行ったら、一年生の時の同級生だった男Sに会った。Sは卒業して就職していたが、一人で来ていたから、お互い一人で映画を観に来る境遇という感じがあった。
 しかし私にはこの映画は二つとも意味が分からなかった。Sは終わったあと「面白かったなあ」と言っていたが儀礼的な感じで、別に面白かったという表情はしていなかった。