古代と近代の架け橋 江戸のダイナミズム」西尾幹二・アマゾンレビュー

学識の豊かさが内容の正しさを意味しない一例
星2つ 、2021/08/28
「ですます」体で書かれているのが、読者に媚びる時代を示しているようだ。著者はドイツ文学、特にニーチェが専門だが、ニーチェに連なる古代ギリシャの文献学から、清朝考証学などあちこちの文献学に通じている。ところが「そもそも古代への学問が、古代の魂へ推参する率直さや勇気を欠いて成立したためしはありません」(94p)などという小林秀雄流神がかりぶりを示したところで、ああどれほど学識はあっても「魂」とか言い出すようではだめだと思い読み進むとやっぱり本居宣長を持ち出しての天皇制礼讃になっていくのであった。「国民の歴史」は面白かったんだがね。「諸君!」連載。なお徳川時代については学問の話ばかりで徳川期文化のことはほとんど触れられていない