宮川朗子ほか「フランス大衆小説研究の現在」アマゾンレビュー

フランスに閉塞しすぎでは
星3つ -、2021/06/11
「純文学と大衆文学の区別があるのは日本だけだ」などと言う人がいるから、こういう研究は貴重だ。もっとも全体としてあまりにフランス文学に議論が限定されていて、ドイツではとか英米ではどうかという視点がまったくないのは問題で、比較文学者とか英米文学者ともっとちゃんと議論したりすべきだろう。冒頭に出て来る架空の学生は、大デュマが好きで仏文科へ行ったら大衆小説だと言われて困惑するが(だがそのあとはこの学生、優秀すぎる)これが英文科だったらどうなるのか。フランスにはたまたまデュマがいたけれど、英国だとメアリ・シェリーになるのか、ウィルキー・コリンズか。あと市川裕史・津田塾大准教授は、大衆小説とパンクロックの話だというので「オレはこれから」みたいな文章で書いているが、大学の紹介を見たら見た目がパンクロッカーで「オレは」という自己紹介だったので苦笑した。