「ウルトラマンA」の観られなかった日

 1972年の金曜日のことである。学校から帰って、夕方から、母と一緒に自転車で出かけ、保育所から弟を受け取り、「マルヤ」というスーパーで買い物をして帰路についたが、すでに六時半を過ぎていたんじゃないかと思う。私は七時からの「ウルトラマンA」に間に合いたくて、子供用自転車を懸命に漕いでいた。自転車はちょっと壊れていて、ペダルが脇のチェーンカバーに当ってステンステンいっていた。「マルヤ」とうちの間は、碁盤の目状の、細い道があって、そこはちょっと危険なところだったが、マルヤを出てほどなく、横あいから来た自動車がキキっといって止まった。私は母からえらい剣幕で怒られ、しょんぼりと家へ帰って、もう「ウルトラマンA」を観る元気もなく、外へ出てうろうろと歩き回っていた。その当時、学校の周辺に一人ぐらいいた、頭のおかしいおじさんが、「どうしたあ~」などと笑いながら通りかかった。

 これがいつのことか、というに、秋から冬なら七時過ぎなら真っ暗だし寒いが、そうではなかったから七月ころで、もしそれがウルトラ兄弟が助けに来るとかいう回なら、次回予告で分かるから、たとえ母に怒られても観ただろうから、大した回ではなかっただろう。七月あたりではなかったかと思う。だから私は「ウルトラマンA」の初回放送は、一回分だけ観ていないのである。