井上隆史「暴流の人 三島由紀夫」アマゾンレビュー


1点
三島がノーベル賞などとれるわけがない
本書は読売文学賞、やまなし文学賞の受賞作だが、そのことを踏まえると一点になる。著者は三島の作品を高く評価している。私は評価していない。それはいいが、著者は川端康成ノーベル賞を受賞したのが三島にとって打撃だったと悲痛な調子で書く。しかし当時43歳の、右翼活動をしている三島が、川端をさしおいてノーベル賞などとるわけがない。そのあたり、著者はとうてい冷静には書いていない。さらに谷崎存命時、サイデンステッカーの三島に対する否定的なコメントがノーベル賞委員会に届けられたことを問題とし、サイデンステッカーはCIAの手先であり、戦後日本の欺瞞を暴く三島、そして自身も同性愛者であることからそれにかかわることになる三島を忌避したと言う。私はそうは思わないし、そもそもサイデンステッカーは天皇制に反対なので、三島に好意的でないのは当然だが、著者はそのことをわざと書いていない。三島に対するひいきのひき倒し本である。