有吉佐和子「開幕ベルは華やかに」アマゾンレビュー

2020年11月17日に日本でレビュー済み

二年後に急逝した有吉の遺作というに近いだろう。帝劇という実名で出てくる劇場での、川島芳子を描いた芝居に主演する70代の大女優・八重垣光子、相手役の中村勘十郎。後半から殺人予告電話で推理小説になるのだが、これはごてごてしていてあまり出来は良くない。むしろ前半の、帝劇芝居の舞台裏のドタバタが面白い。モデルとなっているのは初代水谷八重子、16代中村勘三郎水戸光子菊田一夫といったあたり。脚本を書く作家とその元夫は有吉自身と元夫からあちこちとっている。ああ、有吉は長生きして芸術院会員になり文化勲章をもらいたかったんだろうなと一掬の涙が注がれる。