大正四年に北海道の三毛別などで人喰い熊が現れて数人が犠牲になり、軍
隊まで出動して、村民たちは避難し、熊撃ち名人が仕留めた話は、吉村昭の
『羆嵐』で知られるが、この事件の実録もあり、吉村は熊撃ちを変名で書い
ていて、果して吉村のオリジナリティはどうなのか、気になった。
この事件をもとに脚色したのが、千葉真一監督の「リメインズ」で、真田
広之、菅原文太らが「赤まだら」と呼ばれる恐るべき人食い熊を追うという
アクション映画で、ジャパン・アクション・クラブが中心になっている。け
っこういい映画だと思うのだが、あまり評価はされていないようで、しかし
最近DVD になったのは再評価だろうか。吉村原作の実話『漂流』(森谷司郎監
督)なんか、北大路欣也主演だがVHSは入手困難な上、DVD化もされて
おらず、そんなに駄作なのだろうかと思う。
さて『リメインズ』のヒロインは村松美香という新人女優が演じていて、
これもJAC なんだろうが、一家を赤まだらに食い殺され、女は山へ入っては
いけないという掟のために敵討ちへの参加を断られるが、男姿に変わってま
で赤まだらを追う。
この村松美香が、主題歌も歌っているがレコードはその一枚だけで、あま
り美人ではないが、最後は真田とキスシーンを演じている。はじめ、真田が
旅から帰ってくると、村松が歩いて行く真田の周囲を飛び回るようにして、よその村
へ嫁に出されたが亭主をひどい目に遭わせて逃げてきた、などと語るのだが、こ
こでの様式的な動きがいい。
JACの人だから、体や手足は伸びやかに美しく、見ていて気持ちがいい。
撮影には実際の熊を使ったようで、最後は一つの家をまるごと壊しての熊と
真田、村松の格闘シーンになる。美人でないといっても、私はこういう女優
が好きである。これ以外にはNHKのドラマ『旅少女』に主演しただけで、
映画やテレビに出た形跡はあまりないのだが、むしろこれ一本でのみ主演し
たあたりに、あたかも実在の人物のようなリアリティの源泉がある、とも言
えようか。ともあれ、そうバカにした映画ではないはずである。