「金陵十三釵」(張藝謀)中央公論2016年11月

 巨匠チャン・イーモウの作品だが、日本未公開である。英語字幕つきの
DVDが「The Flowers of War」の題で出ており、リージョンコード1だが
これで観た。
 南京事件、つまり南京大虐殺を背景としたフィクションで、日本で上映さ
れないのはそのためそのためのようだ。アメリカ人の男(クリスチャン・ベ
ール)が、日本軍による襲撃を逃れて、キリスト教の教会へ逃れるが、そ
こへ十五、六人の十代の女子学生と、「金陵十三釵」と呼ばれる十三人の娼
婦とが逃げ込んでくる。
 「金陵」は南京の古称で、清代の小説『紅楼夢』に登場する美女たちが「
金陵十二釵」と呼ばれるので、それにならった呼称である。娼婦たちはけば
けばしい化粧をし、中にはひときわ美しいのもいて(ニニ)、アメリカ人と
痴戯を演じるので、女学生らは軽蔑を感じる。
 だが凶暴な日本兵が、人がいるのを見つけて銃撃してき、女学生は殺され
たり、拉致されて強姦されたりする。その後で日本の将校(渡部篤郎)が兵
隊とともに訪れ、流暢に英語をしゃべり、兵士の暴行について詫びるが、戦
争の時はやむをえないとも言い、オルガンで「ふるさと」を弾く。アメリ
人は、聖職者のふりをする。
 だが二度目に来た将校は、女学生たちが並んで歌っているのを見て、旅団
司令部が、女学生たちの歌を聴きたいから明日連れていくと言い、兵隊がそ
こにいた女学生の数を数えると、それが十三人であった。連れていかれたら
どうなるか分からないと、アメリカ人は許してくれるよう頼むのだが、将校
は聞き入れない。そこで……。
 あとはまあ言わずにおく。チャン・イーモウらしい、通俗味があって華や
かなシナリオである。日本兵の強姦シーン(とその後)などは無残だし、日
本人として不快になるだろうし、アジア人同士の戦争に西洋人の善玉が介入
するというのも気になるところだが、日本で字幕をつけてDVDにしてもい
いのではあるまいか。この版は英語字幕がついていて、さほど観賞は困難で
はない。