安部公房「砂の女」

 安部公房の「砂の女」というのは、20代のころ読んで、あまりピンとこなかったのだが、あとになって、結婚の比喩だろうと思ったら分かった。しかしそんな小説を書かれた安部真知夫人は嫌だったろうが、だからみな遠慮してハッキリ言わなかったのかもしれない。

 それを勅使河原宏が映画化していて、岸田今日子砂の女を演じて半裸になったりするのだが、これも若いころ観て、気持ち悪い裸だなあ、と思った。まあだいたい岸田今日子は気持ち悪い。しかし、当時の落語家がまくらでこの映画のことを言っているのを聴いていると、その人はけっこう岸田今日子の半裸をエロティックに感じていたような気がして、人さまざまだなあと思った。

 しかし私は安部公房というのはダメで、そのほかいくつか読んだが少しもいいとは思わなかった。

小谷野敦