新刊です

頭の悪い日本語 (新潮新書)

頭の悪い日本語 (新潮新書)

訂正
28p「はじめ棹でそのあと櫓に変わる」が正しい。
33p ルビ「あきたらない」→「あきたりない」
52p「語り者文藝」→「語り物文藝」
144p「壮絶」→「凄絶」
なお「disる」については、ヒップホップで、disrespectから派生した語であると舌津智之氏より指摘された。もっとも使っている人が語源を知っているかどうか微妙なところなので訂正はしないつもりである。

 この本にはあとがきがない。実は書いたのだが紙幅の関係で削られた。もったいないのでここにあげておく。

 実はこの本の一章に「日本語を疑え!」という題を編集者がつけてくれたが、私はこれを変更した。「…を疑え!」という表現に手垢がついていると近ごろ感じているからである。もともと、「民主主義を疑え」とか「人権を疑え」といった形で、一九八〇年から九〇年代に、絶対の価値とされているものに疑念を呈せという時に使われ始めた。最初は呉智英さんだったようにも思うが、以後、小林よしのりなども使い、もっぱら保守系の論客が盛んに使うようになって今日にいたっている。
 私も『人権を疑え!』(洋泉社、新書y)に寄稿したことはあるのだが、もはや自分で使う気にはならない。かくのごとく言葉は生き物であって、十年前には新鮮だったものが、陳腐になるということはある。誤用にしても、定着してきたし、もう誤用ではないと認めてもいいのではないかという境界線はあいまいで、最終的には個人の好みということになる。だが、もっとも憂うべきは、政府やマスコミが決めたこと、使っているものが正しい日本語だと思うことである。本書でいちばん言いたかったのは、そのことである。(付記)三浦つとむ『レーニンから疑え』(芳賀書店、1964)があることを高取英氏より教えられた。

なお「命題」の誤用について、呉智英さんも書いていない、とある。『言葉につける薬』にある、と指摘があったが、実はここで呉さんは「至上命題」の誤用についてしか書いておらず、「命題」一般の誤用については書いていないのだ。それにしてもここはも少し説明すべきだった。