先ごろ私に、自費出版したという小説集を送ってきた人がいた。手紙によると、私よりちょっと下の東大卒の男性である。題名を書くと分かってしまうが、題名からしてふざけていたし、中身も、随筆のような、箸にも棒にもかからないものだった。私は猫猫塾で個別指導をしているので、小説について何か言うと指導になってしまうので、小説には触れず、受け取ったというメールだけしたが、返事がなかった。すると一カ月ほどしてから、私のメールが迷惑メールに入っていたと言って返事がきた。(実は私は迷惑メールも一応チェックするので、なぜこういうことが起こるのか分からない。五つくらいメルアドがあるのだろうか)
 そこで、小説はどうでしたか、とあったから、私は有料で指導しているので、それは言えないと返事した。すると、料金は払うから一度会いたいと言ってきた。仕方ないので、会うことはできない(というより、嫌である)、指導は猫猫塾事務局を通じて申し込んでほしいが、厳しいことを言うからあなたの年齢ではプライドが傷つくだけなので、やらないほうがいいと返事した。
 するとさらに返事があり、実は私に編集者を紹介してもらおうかと思っていた、甘いですねとあった。
 こういう人はしばしばいる。しかし勘違いは二重、三重になっている。新人賞でかすりもしないものが、誰かが、仮に村上春樹が紹介したとして、それがどうなるということはない。この人の場合、作品の出来から言ってもまったくない。しかも東大を出て40代でそれが分からないとしたら、それは絶望的である。言っておくが猫猫塾で指導している淵上やけいけいさん、その他の塾生のほうがずっとまともなものを書いている。
 さらに、私自身、小説の依頼など受けたことがない。活字になったものはすべて持ち込みで、最近ではアメブロに載せている。私に持ってくるのが間違いで、むしろ阿部公彦にでも持って行ったほうがまだ可能性はある。