この四月から、博士論文をネットで公開することが義務づけられたという。以前のものではなくて、四月以降に取得したものだ。
 だが、博士論文は一般的に、著作として刊行されるものである。著作として出すのに、ネット上にあったら、買う人などいないだろう。ただでさえ学術書は売れないのに、どうするのか。 
 文科省に電話して訊いたら、「やむを得ない事情」がある時は公開を停止できるというのだが、はじめは公開して、著書になってから、ないしは出る見通しがついてから非公開にするということであろうか。しかしそれだと、関心のある人、つまり買う可能性のある人は、公開されていた時点で取得してしまうかもしれない。となると、著書として刊行する希望を持っている人は、みな「やむを得ない事情」つまりいずれは著書として刊行するつもりである、ということで公開を拒否するかもしれない。
 もしかしたら文科省は、理系のことしか考えていないのかもしれない。