二週間くらい前の『週刊新潮』の連載で福田和也が、安倍政権になってこれで改憲ができると書いていて、そもそも現憲法は米国が作ったものでと言い、江藤淳が生きていたらと説く。江藤はGHQによる検閲を研究していたが、その際、福田恆存が検閲に協力していて、江藤に「アメリカまで行って調べなくても僕に聞けば良かったのに」と言った、とあった。私は初めて知ったので、ほうそうかと思った。
昨年の比較文学会で、占領軍の検閲でシンポジウムをやったのだが、聞いていた平川先生が最後になぜかぶち切れて、日本側で検閲に協力した者がいるはずだ、なぜ隠すと騒いだという。その後、比較文学会の会報で、学会大会で個人および大学の名誉を毀損する発言があったという謝罪文が出て、これは何のことかなあと思ったのだが、学会事務局に聞いても、返事がなかった。ほかの人に聞いても、分からない、平川氏かもしれない、と言う。それで、平川先生は福田恆存のことを言っていたのかなあと思った。
で、そのようにツイッターで書いたら、いきなり「小谷野敦は歴史的事実を自分が発見したかのように言う。田中美知太郎が福田恆存に何と言ったか」などと書いているやつがいたのだが、私は福田和也の文章を読んで、へえそうかと思っただけで、キチガイだと判断して放置しておいた。
ところが、今日出た『週刊新潮』を見たら、福田和也の文章の最後にお詫びと訂正が出ていて、検閲された側である福田恆存を、検閲した側であるかのように書き、諸方面に迷惑をかけた、とあった。
以下、私の意見である。
第一に、他国が作ろうが自国が作ろうが、不適当な憲法なら改正するのは当然である。
第二に、比較文学会の「お詫び」だが、具体的に何をさすのか公表できないなら、こんなものは出さないほうがましである。
第三に福田和也だが、福田は一年ほど前にも『SPA!』の坪内との対談で、私に関して事実と違うことを言って、訂正文が出ているが、福田自身からの詫びはない。アルツハイマーではないのか。