真室二郎(1906-57)という作家がいた。
http://homepage1.nifty.com/naokiaward/pkogun/pkogun14MJ.htm
 昨年11月に、『真室二郎作品集』上下巻が、真室川町から刊行された。下巻巻末に、川端康成との往復書簡が載っているので購入した。編纂したのは真室川町立歴史民俗資料館館長の梁瀬平吉だが、どういうわけか、書簡の年次づけが間違っている。二郎からの2と川端の返信は昭和16年となっているが17年の間違い(訂正あり)。また川端からの、16年6月20日となっているのは19年の間違いで、こちらは川端の日記に、真室二郎に手紙を書くときっちり出ている。
 こういうのをやる時に、ちゃんと研究者に相談すればいいのに、と思うのだが、ただでは申し訳ないと思ってしまうのだろう。もっとも読めばおかしいと分かるので、?なのだが…。 

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ピーター・ドロンケ(1934− )は、「恋愛」が西欧12世紀の「発明」だという説に力強く抵抗してきた研究者で、私は博士論文を書いた際、まだ邦訳のないドロンケの著を参考にした。その後、『中世ヨーロッパの歌』(高田康成訳、水声社、2004)の邦訳が出て、昨年、私がかつて参照した『中世ラテンとヨーロッパ恋愛抒情詩の起源』(瀬谷幸男監訳 和治元義博訳、論創社 2012)が出たのだが、その訳者あとがきはおそらく瀬谷によるものだろうが、びっくりしたのは、「恋愛、この十二世紀の発明!」という警句を、シャルル・セニョボスが『ヨーロッパ文明の勃興』(The Rise of European Civilization)の中で吐いている、と書いてあったからだ。セニョボスのこの語は有名だが、実はこの本には書いてない。博士論文を書いていた時、月村辰雄先生から、この語は有名だが、セニョボスの本のどこにも見つからないと聞いていたのである。ただし、この語を見つけた人がいるらしいので、論文が出るのを待つ。もちろん、瀬谷があげたこれではない。