平家にあらずんば人にあらず

 さっきの・よりんさん(配役宝典)が、「平家にあらずんば人にあらず」は『平家物語』では平時忠「此一門にあらざらむ人は皆人非人なるべし」(岩波古典文学大系、禿髪(まぶろ))なのを、現行流通形式にしたのは誰かと言っていたので調べてみた。なお『源平盛衰記』では「此一門にあらぬ者は、男も女も尼・法師も、人非人」である。古典大系の注には「仏教で八部の鬼神をいう。人間以下の階級に属する」とある。
 最初は、吉川英治『新・平家物語』かなと思ったのだが違うらしい。近デジを使ってみていたら、昭和6年『少年平家物語』(豊島次郎、金蘭社)に「平の一門でない奴は、みんな非人乞食だ」とあった。実はこれ、大正14年の入交総一郎編『平家物語』(金蘭社)とまったく同じ本であることが分かり、つまり豊島次郎=入交総一郎らしいと変な副産物が出たのだが、こう見ると、
 「ははーん、『非人』はいかにもまずいので、戦後になって『人にあらず』などと歪曲されたのだな」
 と思う。
 しかし、谷崎潤一郎は昭和7-8年の「青春物語」で、「(その当時は)『平家にあらざれば人にあらず』と云ふ如く、『自然主義者にあらざれば作家にあらず』の感があつた」と書いている。もっともこれはいくらか谷崎や泉鏡花の被害妄想である。
 グーグルブック検索をしていて、頼山陽の『日本外史』がひっかかったので見てみると、
http://8.health-life.net/~susa26/zakkityo/nihongaisi/no1/1-1.pdf
 「方今天下の人、平族に非ざる者は、人に非ざるなり」
 とあった。このあたりが最初だろう。
 ところで、北条時政平氏である。