『自慢するバカ』で一番読んでほしかったのは、文学俗物がありがたがるのは、吉田健一内田百けんボルヘス須賀敦子尾崎翠、ってあたりだったんだけどな。あと白洲正子、はあれは文学俗物というより「和」俗物だな。(百けんの「けん」を正しく入れたら文字化けした)

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新潟大の三浦淳先生のサイトで知った中野雅至『1勝100敗! あるキャリア官僚の転職記 大学教授公募の裏側』(光文社新書)を買った。この人は題名通り、官僚から学者に転じて、百近い公募に出して兵庫県立大准教授になったという。巻末に公募落選一覧があり、99年から2004年まで載っている。
 また巻末には、阪大名誉教授の白川功という人の文が載っていて、もっと早く中野から相談を受けていたら、早く博士号をとるよう勧めただろう、とある。中野は2003年に新潟大で博士号をとっていて、白川は、もっと早くとっていればこんなに落選しなかっただろうと書いている。
 うーん、困るなあ。白川は理系の学者だから、こういう勘違いをするのだろうが、人文系では、博士号は公募の前提になっていることもあるが、なくても就職した人はいるし、あってもできない人はいる。それと、百件落選といっても、その期間がわずか五年である。十年、十五年と公募に出し続ける人だっている。百件も出せるというのが(だって専門に合致する公募はそうそうないこともあるのに)凄い、ないし無謀だし、五年目で当たったというのが幸運ともいえる。しかも新潟大の博士号で! さらに学部は同志社で、官僚になったというのが驚きである。くれぐれも、これを基準にものを考えてはいけない。