砂糖と塩

 昨年秋から、ダイエットのため夜の散歩をしていたのだが、景気をつけるために金剛杖を突いてちゃりんちゃりんやっていたから、人けのない夜十時過ぎにやっていたが、やはり時おり遭遇する人には奇人と見えただろう。
 ところが震災後の放射能騒ぎで散歩をやめた上、ストレスからお菓子をむやみと食べていたのでまたやばくなってきて、お菓子停止、散歩を再開した。
 高尾利数『砂糖は心も体も狂わせる』を図書館で借りてみる。著者は神学者だが、医学を修めたこともあった。トンデモ本に見えるので、アマゾンでも読まずに一点をつけている人がいる。実際読んでみると、砂糖の取りすぎはよくないという、それはその通りだが、やっぱりところどころ変で、砂糖をとるのをやめさせたら不良少年が善良になり、また砂糖をとらせたら悪くなったとか、平均寿命が延びているというのは新生児死亡率が減ったからに過ぎないとか書いてある。20年ほど前に島崎藤村の遠縁にあたる西丸震哉(2011年をあらわす漢字は「震」になるのだろうか)が、今の若者の食生活では41歳が平均寿命になると言っていた。
 ところで、仕事上の必要があって『ノルウェイの森』を読み返していたら、ナメクジを呑んだ男の話が出てきて、気持ち悪くてそのあとで塩水を飲んだ、とあったが、これは多分、ナメクジは塩で溶けるという俗説を信じたのだろう。ナメクジに塩をかけると縮むのは、塩が水分を吸い取るからで、砂糖をかけても同じなのである。『ウルトラQ』でも、ナメゴンを海に落とすというのがあったが、あの場合、浸透圧とかの関係で何とかなるかもしれないが、塩水を飲んでも意味はないだろう。
 村上春樹が、そんなこと先刻承知で、バカな男を描いたのかというと、どうもそうは思えない節がある。

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昨日近所の本屋にいたら、60代後半くらいの金髪のおばあさんが入ってきて、『文藝春秋』は、と言っている。発売は明日だろう、と内心で思っていると、店員にそう言われて、ああ明日ね、と言いつつ、ふと店頭にあった『週刊文春』をとって、「じゃあ週刊でいいわ」と買って行った。週刊文春が月刊文春の代わりというのがおかしかったが、何も買わずに帰るのは悪いとでも思ったのか。