「ボドレール」発見

 かつて吉田秀和は「フォーレ」というのはおかしい、「フォレ」であると言い、フォレと書いていた。それで私もフォレと書く。ところがそうなると「ボードレール」もおかしいではないか、と人から言われ、それならと「ボドレール」と書いた。すると校閲がチェックする。ええい、面倒くさい。
 ところが、ミシェル・カルドーズ『ビゼー 『カルメン』とその時代』を読んでいたら、冒頭の、ビゼー年譜に、「ボドレール」と出てきたではないか。訳者は平島正郎ら。ほかにも、独自の表記が多く、(セザール)フラーンク、オフェンバック、ショソン、メイェルベール、ポール・デュカース、ボマルシェといった具合だ。平島正郎は謎の人物で、高階先生、菅野昭正との鼎談本が有名だが、単著は『ドビュッシー』だけである。
 なおこのカルドーズの本は、ビゼー伝兼カルメン論としても、かなり面白い。