個人情報保護への疑問

 岸本葉子さんが『がんから始まる』を出す直前のことだが、岸本さんのファンサイト「ドルフィンホテル」の掲示板で、このことについて書き込みがあり、ある人物が岸本さんにインタビューしたと言って書き込んだところ、まだ公表されていない病状について書くのはやめてくれと強い調子の抗議があった。しかし岸本さんは既に『学士会会報』に「がんから始まる」という文章を載せており、その人の書いたことはその範疇を出るものではなかったので、私がその旨書きこんだが、みごと無視された。おそらく彼らは、それを会員制の団体のものだから外部秘とでも見なしたのだろう。しかし『学士会会報』は普通に図書館にあるのである。
 先日、システムブレーンとかいう会社からマンション運営の電話がかかってきて、それが比較文学会の名簿で見た、と言っていたことは書いたが、その後学会から葉書がきて、ほかにも被害が出ていると報告があり、学会名簿を処分する時は断裁などしてほしいとあったのだが、「しつこい勧誘」というのは別に被害というほどのものではなかろうと思う。現に私は着信拒否にしているわけだし。「個人情報」とやらが流出することの危険が、たかだか怪しい会社から電話がかかってくる程度のことなら、実にどうということはあるまい、と私は思う。どうも個人情報保護法以来、実害の多寡も考えずに、被害だなんだと言う連中が増えている。