『告白的女優論』と久保まづるか

 『女優岡田茉莉子』を読んだら、吉田喜重の映画名が次々出てきて、調べたらそれがみなDVDになっていて、どうやら吉田が再評価されているらしい。封切当時はほとんど評価されなかったものが多い。もちろん『秋津温泉』は名作だ。ほかには『エロス+虐殺』と『鏡の女たち』『嵐が丘』の評価が高いが、この中では『嵐が丘』がいい。
 それで最初のほうからいま三作ほど観て『告白的女優論』を観終わった。だが、『エロス+虐殺』もそうだったが、だいたい女二人男二人くらいが出てきて三角関係になったりして、フランス演劇のような観念的な、愛がどうの死がどうのセックスがどうの母親がどうの精神分析がどうのといった会話を交わし、映像の実験やらメタ映画的なことをするやら、要するに和製ヌーヴェル・ヴァーグで、あまり感心しない。
 『告白的女優論』は、北原武夫の『告白的女性論』をもじったもので、妻である岡田、浅岡ルリ子、有馬稲子の三人が主役である。これまた、三角関係や精神分析がふんだんに出てくるフランスかぶれ的映画である。ほかに若いころの太地喜和子も出ているのだが、「日本映画データベース」には、有馬にずっとついている久保まづるかが出ておらず、私が一番気になったのはこの女優であった。民藝の女優らしいが、左時枝風の顔だちで、一般的には美人ではないのだが、「天下の美女」有馬稲子と対等にわたりあっている。だが、私には久保まづるかの印象が非常に強かった。この女と恋愛をしたらさぞ強烈なものになるだろうと思わせるものがあった。

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北海道新聞』今年の三冊で北上次郎氏が『私小説のすすめ』を挙げて下さる。

私小説のすすめ」は田山花袋「蒲団」を徹底擁護し、「女のことを思ってめそめそする自分、というものこそ、小説でなければ書けないことではあるまいか」というこの本のモチーフそのものがとても興味深い。