あの人、右ですよ

 竹内洋先生が『諸君!』に連載している「革新幻想の戦後」(3月号)で、初めて、なぜ福田恒存があんなに清水幾太郎を罵倒したのか分かった。それはそうと、1960年代だろうが、竹内先生が「福田恒存もいいぞ」と言うと仲間たちから白眼視され、女子学生など「この人、右翼よ」と言ったという話が書いてある。そういう時代だったのだ、というのだが、私が学生の頃にもまだそういう感じは残っていて、カナダ留学前にアテネ・フランセの英会話に通っていたら、ふと早稲田の英文科の女子学生と話す機会があって、私が松原正を知っていると知った女子学生は「えっ、松原、知ってるんですか。あの人、右ですよ!」と勢いこんで言ったのである。
 まだ私のことをよく知らないうちからそういうことを言うのはどういうものか、と私は思ったが、1989年頃だったろうか。あと、比較文学の大学院へ入った頃、英文科の研究室へ行くと、Mという同期生が「比較は右翼だっていうけど…」と言ったことがある。当時の私は先述した通り複雑な状態にあったから、「うん、まあしかし根底的に考えれば必ずしも…」などと言ったのは、右左などという単純な二分法はどうかという意味だったのだが、Mはやや呆然として、「はあ、根底的に考えれば比較は右翼ではないと…」と呟いたのである。いや別にそんなことは言っていないのだが。

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4月号『諸君!』には平川祐弘先生も寄稿しておられる。中で、大江健三郎が自国文化を軽視しているとして、ノーベル賞は貰って文化勲章を辞退するという「スタンドプレー」をやったと書かれている。しかし、文化勲章天皇の手から渡されるから辞退したのであって、日本が共和国であれば受けていただろう。もっとも、ノーベル賞も王国スウェーデンのものではないかとか、サルトルは辞退したではないか、と言うならまだ分かるのだが、ここでもまた平川先生にとっては「天皇=日本」なのだが、どうしてもそれを言わない。陛下を崇敬しない者は非国民である、と言わないのが、平川流なのだ。
 もう一つ、サイデンスティッカーによる英訳『源氏』も批判している。サイデン訳のために、光源氏が夕顔を強姦したことになってしまったといい、フェミ二ストが、『源氏物語』をレイプの文学だなどと言い出したと言うのだが、柏木と女三宮、匂宮と浮舟の場合は強姦だろう。それに、日本でそういうことを言い出したのは今井源衛であって、それもずいぶん批判されたのだが、ただ恐らく平川先生がサイデンを気に入らないのは、サイデンが天皇制否定論者だったからだろう。

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小林よしのりの「天皇論」は、終るまで待ってコメントすることにしている。問題は『差別論スペシャル』との整合性をどうつけるかである。天皇制が「身分差別」であることは明らかなのだから。
 しかし既に、天皇を神だと信じていたのが小国民世代だけだという論が出た以上、天皇制は近代になって作られたもので、徳川時代の庶民は天皇の存在など知らなかったという論へはいま一歩であり、西尾幹二のような、国民が支持したから天皇制は存続したのだという論は成り立たなくなっている。
 

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 中学生の頃、少年ドラマシリーズの「孤島の秘密」が好きだった。これはオーストラリアのもので、製作は74年、日本での放送は77年だったが、優秀な若者を集めての世界一周紀行中、船が難破して、見知らぬ孤島に男三人、女二人が漂着し、そこは外界から隔絶して18世紀のままで文明が止まり、オールマイティQという独裁者が治めていた。若者たちはQと戦って遂に村人との協力でこれを倒すという筋だったが、私がひときわ好きだったのは、日本人少女という役柄で出ていた女子で、ケイコといったが、女優はアマンダ・マーというシナ系オーストラリア人だった。もっとも当時から、実際はシナ人なのじゃないかと言われており、やはりそうらしい。
 もっともクラスの女子などは、ケイコがノーブラだから好きなんだなどと言って私をからかったが、当時から私はアジア系女性が好きだったようだ。
 さて、それから30年、少年ドラマのいくつかがDVD化されたが、海外ものはもちろんされていない。調べてみると、原題は「The Lost Islands」で、YTでオープニングが観られて、日本ではそれを短くして詞をつけていたことが分かった。その詞は、著作権上どうなのか分からないが、
http://www.youtube.com/watch?v=MnfZVk7sdk8
 誰も知らない小さな島に
 流れ着いた五人の仲間
 二世紀前に逆戻り 遠い昔の謎の島
 島の支配者はオールマイティQ
 村人たちは恐れ敬う よそ者は入れぬ硬い掟
 行こう力を合わせ 探れ孤島の秘密
 というのだった。
 wikipediaによると、イスラエルではカルト的な人気があるらしい。さてDVDは? ある。しかし英国アマゾンでは品切れで、200ポンドという高値がついている。L'iles perdueというフランス語版が生きていたので注文したが、さて無事届くだろうか。

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http://blog.goo.ne.jp/ayakashi1154/e/7a5afe938b03ddb93dcd496a8039854d
田中さんもちょっと最近、吉原真里風か。もっともノーパン喫茶というのは、実際にはさして面白くないというので、ほどなくウェイトレスが上半身裸とか、スケスケの服を着ているという状態になったのだが…。
http://blog.goo.ne.jp/ayakashi1154/e/c698f56b0fd8f9ed21bac1f08692d650
 大学教授を「蟹工船」などに喩えるのは比喩といってもひどいだろう。専任がいかに面倒か私は知っているが、非常勤やポスドクすらない博士号取得者だっているので、教授がこういうことを言ってはいけない。  

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天地人』の原作に、城下は雪に埋もれていた、などと書くと雪のない地方の方は大げさに思われるだろうが、などと書いてある(上巻140p)。今どきそんなこと誰も思わねえよ! 『北越雪譜』の時代だとでも思っているのか。北国の雪がどんなだか、しょっちゅうテレビや映画で観てるんだからさあ。何か、大河ドラマ史上最低の原作じゃないかという気がして来た。