2024-01-01から1年間の記事一覧
自伝『あっちゃん』に、小学三年生の時に担任の女性教員が『春駒のうた』という児童文学を少しずつ朗読してくれて、生徒らが聞き入っていたが、私はあまり関心がなかったということを書いたが、私も小学校へ入る前は母の読み聞かせを聞いたりしていたが、そ…
福田和也は江藤淳に、小林秀雄の『本居宣長』について、なぜ昔のようなクリスプさがなくなったんですかね、と訊いたことがあるという。江藤は困惑しつつ、「疲れたんだね、疲れちゃったんですよ」と答えたというが、単に「年をとった」「老いた」ということ…
三年前の直木賞受賞作だが、図書館で待ちが多くて、文庫化されるのを機に早めに予約を入れて、前半を読むことができた。荒木村重が有岡城に籠って信長に反逆し、使者として来た黒田官兵衛を地下牢に閉じ込めた史実を背景に、歴史小説と見せかけた推理小説に…
18世紀中ごろのフランスで「ブフォン論争」という音楽論争があった。1752年に、イタリアの喜歌劇を上演するバンビーニ一座がパリに来て、幕間劇としてペルゴレージの「奥様女中」を上演して好評を得たところから、イタリア音楽のほうがフランス音楽より良い…
「あっちゃん ある幼年時代」(幻戯書房)小学校時代までの自伝 訂正 *イトーヨーカ堂→イトーヨーカドー(本文と地図、数カ所) *203p「死刑!ウルトラ五兄弟」で・・・ヒッポリト星人」→「「死刑!ウルトラ五兄弟」で・・・ヤプール・・・」 *261p「ブラッ…
湯浅規子の「焼き芋とドーナツ」という本をちらちら読んでいたら、これが、高井としをの『わたしの「女工哀史」』と、サンドラ・シャールの『『女工哀史』を再考する』という二冊の本をめぐって書かれた本であることが分かったので、この二冊を図書館で借り…
大学一年の時のことだ。同じクラスの男が数人で雑談していた。愛知県から一浪で入ったNという男が、プロレスの話を始めた。そこへ、津金沢というやはり一浪の東京の高校から入ってきた男が、「プロレスなんて、八百長でしょ」と言った。するとNは、「まだこ…
「劇中劇」のように、小説の中に小説があるということがある。推理小説などでもあるが、それはまあ仕掛けだからいいとして、優れた小説が入っているという想定で小説が入っていると、これはなかなか厄介だ。 松本清張の「天才画の女」は、天才画家が現れたと…
『北の海』は、井上靖の自伝小説で、「しろばんば」「夏草冬濤」に続く、沼津の中学校を出て浪人していた半年の、柔道三昧の日々を描いている。翌年、四高の柔道部に入るよう誘われて金沢の四高を訪ねるのが表題の意味で、最後は神戸から両親のいる台湾へ向…
私が通っていた越谷市立富士中学校に、鶴渕先生という社会科の教師がいた。当時、40歳くらいだったろうか、顔にやけどがあった。何でも、一年か二年前までは理科の先生だったが、授業中の実験で爆発事件があったためで、そのため理科の先生をやめて社会科に…
『東京都同情塔』で芥川賞を受賞した九段理江が、受賞インタビューで「音楽が好き」と言ったので、おっと身構えた。音楽が嫌いな人というのはめったにいないので、この言葉には色々な意味がある。九段の場合、「ヒップホップが好き」と言っていたから、その…
八木詠美の「空芯手帖」 が太宰治賞をとった時、「ウソ」だったはずの「妊娠」がいつの間にか本当になっている意味が分からず、当時産経で文藝時評をしていた石原千秋に「最初にウソだと言ったのがウソだったんじゃないか」というはがきを出したりしたのだが…
私は、伝記を書いた作家、つまり谷崎潤一郎、久米正雄、里見弴、川端康成、近松秋江、大江健三郎、江藤淳の著作は基本的に全部読んでいるが、それ以外にほぼ全作品を読んでいる作家となると、車谷長吉と西村賢太になろうか。 車谷の「忌中」という非私小説が…
1962年 12月21日、茨城県水海道市(現常総市)三坂町(三妻駅そば)に生まれる。父建三は時計職人。水海道一高へ行っていたが肺結核で三年病臥し、大学へ行きそびれていた。母清子は中卒で銀行に勤めていた。 1965年 6月、同市森下町に平屋一戸建てを建てて…
「日本では昔は文系の博士号を出さなかった」というようなことを言う人がいる。これが「あまり」がついたり、「若い人には」がついたりすればいいが、「まず」「まったく」とか、「若い人にはまったく」とかつくと、それはデマである。実際には1924年以来多…
小谷野賞の発表です。 橘玲・安藤寿康『運は遺伝する』(NHK出版新書) 特別賞 アビゲイル・シュライヤー『トランスジェンダーになりたい少女たち』(岩波明監訳、産経新聞出版)
エミール・ギメはフランスの富豪で、明治初期に来日して日本を見て回り、浮世絵などを大量に買い込んでフランスでギメ美術館を作ったり、日本についての著述をした人で、その挿絵を友人のフレデリック・レガメーが描いている。 そのギメの『明治日本散策 東…
岩波文庫版で読んだのだが、これは青空文庫にも入っている(ただしバラバラなので注意が必要)。高村光雲の懐古ばなしを、大正11年に日曜ごとに光太郎と田村松魚が聞いて、松魚が筆記したものだが、ですますの語り口調でべらぼうに面白い。それはまあ、光雲…
「別冊文藝春秋」に1955年から56年まで連載された、十人の近世から近代にかけての工芸職人などの伝記集。大江健三郎が初めて石川淳に会った時この本をくれたというが、その後大江と石川の関係はやや曖昧模糊としている。 人は都々逸坊扇歌、鈴木牧之、小林如…
1973年6月14日から、74年9月14日まで、「朝日新聞」夕刊に連載された時代小説。中公文庫で上下二冊。背表紙の解説を書き写すと、 「元禄十五年十二月、赤穂浪士の討入りが、上杉家の若武者、春日今之助の運命を変えた・・・・・・。公儀に隠した城の修築、禁裡修復…
いま大河ドラマでやっている「長徳の変」についてウィキペディアで見ると、藤原道長が「黒幕」だと書いてあるのだが、どういう風に黒幕なのかは書いていないから分からない。 平安前期の「応天門の変」も、伴善男が応天門に火をつけて源信に罪をなすりつけよ…
日本近代文学史では、山田美妙の「ですます体」は、尾崎紅葉らの「だである体」に敗れたということになっているが、実際にはですます体はかなり根強く生き延びていて、最近の新書などはですます体が多いし、児童文学も以前からかなりですます体だ。ほかにで…
私が若いころ、歌謡曲好きの友人が「作詞をして当たったらいいなあ」というようなことを言っていた。作詞家というのがどれくらいもらえるのか、歌がヒットするとそれだけで儲かるのか、その後仕事が多く来るから儲かるのか分からないが、何しろ一つの歌の作…
2023年の1月ころ、私はツイッター上で、水原紫苑の歌集『光儀(すがた)』(2015)には、天皇礼賛の短歌がある、と書いた。すると歌人の吉田隼人という人物からそんな事実はないと言われた(吉田は、当人=水原からの抗議を私が無視したと書いているが、ツイ…
1988年に、江藤淳は日本文藝家協会を中心に、売れ行き不振の文藝書を応援するために文藝書専門店を作ろうという気炎を上げていた。その結果米子市にそういう店ができたのだが、そこへ、文藝家協会理事長・野口冨士男と江藤淳が、自分の勧める文藝書百選とい…
アニメ歌手として不動の地位を誇る堀江美都子(1957- )は、私が大学生のころにはすでに「堀江美都子大全集」などというLPが出るほどの大物だったが、私は関心はあったけれど、特にLPを買うとかファンクラブに入るとかいうほどのファンではなかった。しかし…
沖雅也が自殺した時(1983年)私は大学二年生だったが、東京へ向かう電車の中で二人のおじさんがその話をしていて「なんで自殺なんかするのかねえ、女でも作りゃいいんだよ」と言っているのを聞き(その時点ではまだ第一報しか入っていなかった)、沖雅也が…
新潮社のPR誌『波』に、俳優の高嶋政伸が「インティマシー・コーディネーター」というですます調の文章を書いている。私はほとんど観たことのない「大奥」というドラマで高嶋が徳川家慶の役をやり、自分の幼い女児に性的暴行を加える話を撮影するのに、役を…
これまた、読書メーターにはこの本の登録がないしするのでここに書いておく。歌舞伎の俳優と落語家の思い出噺だが、あまり有名どころは出てこず、不遇な役者、落語家が多いところがいい。特に、二代目の左団次が死んだあとの未亡人の零落ぶりが、はっとする…
何しろアマゾンレビューからは閉め出されているし、読書メーターにはこの本の登録がないしするのでここに書いておく。最初のほうはいかにも身辺雑記や天気の話などが多かったが、自作解説や他の文学者の話になると面白くなる。子母沢寛が『戊辰物語』をほと…