2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

「グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独」感想

グレン・グールドが50歳の誕生日に死んだのは私が大学一年の時で、私がグールドを聴いたのはその死後だった。カナダへ行った時、自殺だと聞いたのだが、どうやらそうではなく、晩年は病気恐怖とパラノイアのため複数の病院で多くの薬をもらいオーヴァードーズ…

谷川建司の歌舞伎論

谷川建司という私と同年の映画研究者がいて、早稲田の客員教授などをしている。この人が「高麗屋三兄弟と映画」などを出して以来、歌舞伎に口を出すようになっているが、本来の専門ではないせいか、細かい間違いが多い。「レビュー大全」389pにレビューがあ…

新刊です

「蛍日和 小谷野敦小説集」幻戯書房 収録作「蛍日和」「幻肢痛」(以上「文學界」)「幕見席」「村上春樹になりたい」 訂正:「幕見席」で春日部高校を共学と誤認して女子のヒロインを入学させてしまいました。決してトランス男性になったわけではありません…

映画「パーフェクト・ストレンジャー」感想

これは2007年の娯楽映画で、ジャーナリストのハル・ベリーが少女殺人容疑者を突き止めるためブルース・ウィリスの会社社長に色仕掛けで迫るという、あまり子供には見せられないタイプの映画で、前半はかなりケバケバしく、趣味のいい人間が観る映画でもない…

映画「酒とバラの日々」の感想

ジャック・レモン主演、ブレイク・エドワーズ監督の白黒映画「酒とバラの日々」(1963)は、アメリカ映画で私が観た三つ目の「アル中映画」だ。「失われた週末」(1945)も「愛しのシバよ帰れ」も、アル中で断酒中の男が出てきて、途中から酒に手を出すとい…

今井むつみ・秋田喜美「言語の本質」の感想

発売と同時にアマゾンで13位とかものすごい売れ方をしたので、なんだなんだと思って取り寄せてようやく届いたので読んでみた。年長の今井は発達心理学者で、秋田は言語学者、秋田は私がいた阪大言語文化研究科の講師をしていたことがあり、今は名古屋大准教…

手紙と手記

先日、神保町の読書人でインベカヲリ★さんと対談した時、聴衆の中に、西村賢太の元彼女さんがいて、終わってからサインをする席にしたら手紙を渡された。2013年から2017年ころにつきあっていた、関西の大学を出た女性らしく、名前は書いてあったが連絡先など…

映画「いつくしみふかき」の感想

私がカナダから帰ってきて大阪へ赴任するまでに「熱海殺人事件」の新ヴァージョンに出ていた平栗あつみという女優が良くて、渡辺守章先生もこの女優が気に入って「ロレンザッチョ」の主役に起用していたし、大河ドラマ「花の乱」でも端役で出ていたが、映画…

音楽には物語がある(54)高田みづえの幸運 「中央公論」六月号

私の若いころ、NHKの「のど自慢」を観ていたら、ゲストが新沼謙治と高田みづえだった。素人の歌が終わって、司会のアナウンサーがゲストに感想を求めた。新沼は、「今もね、イクエちゃんと話してたんだけどね」と口を開いた。高田みづえは憤然として、「みづ…

松本健一「蓮田善明 日本伝説」の感想

私は日本の敗戦とともに連隊長を殺して自分も自殺した、三島由紀夫の師として知られる蓮田善明というのがあまりに嫌いで、これまで蓮田を論じた本すら敬遠してきたのだが、松本健一は右翼なのか左翼なのかという疑問がわいたのと、すでに故人であり、読んで…

映画「崖下のスパイ」感想

チャン・イーモウの最新作で、1930年代満洲での、中国共産党の工作員と日本の特務警察の虚々実々のやりとりが描かれている。拷問シーンもあったりして陰惨だが、日本人もチャイナ人が演じていてチャイナ語でしゃべっているのが変だし、日本人の中に共産党員…

映画「メランコリア」感想

ラース・フォン・トリアーは飛行機に乗れないそうで、私も乗れないという点で共感している。これはさる映画本で紹介されていたので観た。シャルロット・ゲンズブールが出ていて、メランコリアという地球と同じくらいの大きさの惑星(?)が地球に衝突すると…

新刊です

「レビュー大全」 訂正 93p「共同通信社」→「時事通信社」 349p「匂頭内侍」→「匂当内侍」 あと343p「ぼくのミステリ・クロニクル」で、森村誠一の『ロマンの切子細工』とあるのは『ロマンの象牙細工』の間違いだったそうで、その中の「森村推理悪口集」…

松本俊彦「誰がために医師はいる」感想

エッセイストクラブ賞受賞作というので読んでみたが、半分くらい読んで、これは私には合わない と思いやめた。まず著者の中学時代の話が、あまりにも特殊すぎて受け入れるのが難しく、こんな 環境でよく勉強できたなと思う一方、著者の両親はどうしていたの…