2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧

「いまを生きる」(ロビン・ウィリアムズ)のアマゾンレビュー

5つ星のうち1.0 アメリカの金八先生 2021年1月29日に日本でレビュー済み 全体にホモソーシャルで嫌な感じがする。1959年の設定だというが、芝居に出るだけでなんで父親があんなに怒るのか。作者の側に、保守的でダメな学校と自由な教師と詩という幻想がある…

内海健「金閣寺を焼かなければならぬ」アマゾンレビュー

小谷野敦 5つ星のうち1.0 文学的精神病論 2021年1月27日に日本でレビュー済み Amazonで購入 大佛次郎賞をとったので、なんだなんだと思って読み始めて、すぐ落胆した。吉本隆明あたりが好きな「文学的精神病論」に過ぎなかったからだ。私は金閣寺放火に何の…

「未来少年コナン」低視聴率の訳

「未来少年コナン」が最初の放送では低視聴率だったのだが、その理由は、当時のアニメの一話完結式でなく、「ヤマト」「ガンダム」のような準一話完結でもない、ひく形式だった上、一週間に一回だったから観づらかったというのがあるだろう。 だが実は私は初…

対談

私には対談集がない。そんなに対談というのをしていないし、人気もないからである。 『もてない男』が売れた21年前、これからいろいろ作家とか有名人と対談して、林真理子や阿川佐和子にも呼ばれたりするんだろうと思ったりした。以後もさまざまに、有名人と…

音楽には物語がある(24)ピンク・レディー(1)中央公論2020年11月 

ピンク・レディーがデビューしたのは一九七六年八月だというから、ちょうど中学二年の私がアメリカでホームステイしていたころだ。八月末には帰国したが、うちではあまり民放の歌謡番組などを観る習慣がなかったため、「ピンク・レディー」の実物を見る機会…

音楽には物語がある(23)音楽と右翼 中央公論2020年10月

その昔、テレビ朝日(NET)の「題名のない音楽会」という音楽番組の司会を、黛敏郎が務めていたことがある。黛は右翼の論客としても知られ、そのため番組はしばしば右翼的な内容になった。黛の背後に巨大な昭和天皇の肖像が降りてきたりしたのを覚えているが…

論文作品主義

学問においては、どのような事実を明らかにしたか、証明したかということが重要なので、それさえ書いてあれば論文は一ページでもいいのである。 だが特に文学研究の世界では、論文を「作品」のようにとらえる風潮が多く、実際には二、三ページも書けばすむも…

加賀淳子「浮雲城」

加賀淳子の「浮雲城」は『改造』1950年1月号に載り「第一部終」となっている。近衛文麿の娘昭子が、島津忠重の嫡男・忠秀に嫁いだが、整体師の野口晴哉と不倫して駆け落ちした事件を描いたもので、もちろんみな変名にしてあるが、華族の仲間から厳重抗議が来…

菊池寛『受難華』文庫化とその解説

菊池寛の長編通俗小説『受難華』(じゅなんげ)が中公文庫にはいり、現物が送られてきた。手紙によると、私の『忘れられたベストセラー作家』を読んで知ったという。私が『受難華』が面白いと言ったのは『恋愛の昭和史』のころからで、知ったのは90年代に、…

「怪獣総進撃」

私は「怪獣総進撃」という映画が大好きなのだが、当時私が住んでいた水海道の駅前の映画館は、東京で上映されて2,3年しないと上映されず、私は1971年ころの上映を楽しみにしていたのだが、交通事故にあって観に行けなくなり、ベッドの上で「怪獣総進撃」…

正宗白鳥の「マンザイ」

『群像』の1956年12月号の177p下段に「『群像』創刊満十周年の会」という社告みたいのがあり、十月十二日に椿山荘で開催されたとあるのだが、最後に妙なことが書いてある。正宗白鳥が万歳の音頭をとったのだが、白鳥は「群像、万歳」と音頭をとり万歳三唱さ…

音楽には物語がある(22)中山晋平と「証城寺」 中央公論2020年11月

私は伝記小説や伝記映画が好きである。で、昨年、北原白秋の伝記映画「この道」(佐々部清監督)を観た。白秋は戦争中に死んでいるので、戦後、女性記者が山田耕筰(AKIRA)に白秋の話を聞きに行き、山田はいやいやながらに、白秋がいかに女にだらしなかった…

音楽には物語がある(21)さだまさしと「秋桜」 中央公論2020年10月

さだまさしといえば、もう四十年も前だろうか、ラジオか何かから流れた「案山子」(一九七七)の「元気でいるか、町には慣れたか」という郷里の母親からの手紙形式の歌が流れるのを聴いた私の母が、「これ、いい歌ね」と言った時から、ああ、おばさんキラー…

梁英聖「レイシズムとは何か」アマゾンレビュー

小谷野敦 5つ星のうち1.0 なぜ帰化しないのか 2021年1月8日に日本でレビュー済み 著者は日本における在日朝鮮韓国人へのレイシズムを国籍と結びついていると論じる。欧米と違って日本の在日はシティズンシップを獲得していないという。ならばなぜ帰化しない…

21世紀の純文学小説10点

『文學界』で鴻巣、安藤礼二、江南が10点ずつ選んでいたが割と不満だったので自分の選んだのをあげておく。 車谷長吉「忌中」 勝目梓「小説家」 西村賢太「小銭をかぞえる」 大江健三郎「水死」 三木卓「k」 柳美里「JR上野駅公園口」 島本理生「夏の裁断…

「世界の小説大百科 死ぬまでに読むべき1001冊の本」のアマゾンレビュー

小谷野敦 5つ星のうち2.0 手なぐさみに 2021年1月6日に日本でレビュー済み 編者のボクスオールという人は、本書を見てもウィキペディアを見ても生年が分からない。1001もどうやって集めたのかと思ったら半分以上は20世紀以降の、通俗小説めいたものまで含め…

フランス・ドゥ・ヴァール「ママ、最後の抱擁」のアマゾンレビュー

小谷野敦 5つ星のうち4.0 人間は動物の一種である 2021年1月6日に日本でレビュー済み 動物行動学の啓蒙書であり、最新の知見であって、かつてのヴィトゲンシュタインの「ライオンがしゃべっても何を言っているのか分からないだろう」という、人間と動物がま…

「子供屋」と「旅役者」

近世の男色売春については、花咲一男の『江戸のかげま茶屋』が詳しいが、神田由築の「江戸の子供屋」(佐賀朝・吉田伸之編『シリーズ遊廓社会1』吉川弘文館)によると、歌舞伎が野郎歌舞伎になってから、歌舞伎役者が「子供屋」というのを経営して、役者の…

ノラ・ウォーン

「川端康成詳細年譜」の372pに「イギリスの作家ノラ・ウォーン」というのが出てくるが、これは私は加筆されていることに気づかなかった。Nora Waln である。 Nora Waln - Wikipedia 日本では1940年に『支那流浪記』という翻訳が出ている。