2020-02-01から1ヶ月間の記事一覧

古川健「治天の君」

古川健(たけし)の「治天の君」は、原武史の本を参考に大正天皇を描いた戯曲で、2013年初演、ハヤカワ演劇文庫に入っている。読んでみたが、言葉の間違いが多い。 まず明治天皇が「現人神」などと言うが、私の理解ではこの言葉は昭和になって言われるように…

小林秀雄、水上勉、石原慎太郎

小林秀雄が満座の中で水上勉を罵り、石原慎太郎が小林を止めたら小林が面白がってくれたという話は石原の自慢話の一つだが、これは文士劇で「白浪五人男」をやった時だというから1962年だろう。すると小林が60歳、水上が43歳、石原が30歳でうまくあう。

「忠臣蔵」と教養

NHKのBS-プレミアムでやっていた渡辺邦男の「忠臣蔵」(長谷川一夫、1955)を観たが、わりあいテキパキして良かった。特に私の好きな「南部坂雪の別れ」がよかった。垣見五郎兵衛の話は記憶になかったが、これも講談ネタらしい。 1975年に「元禄太平記…

安部公房「砂の女」

安部公房の「砂の女」というのは、20代のころ読んで、あまりピンとこなかったのだが、あとになって、結婚の比喩だろうと思ったら分かった。しかしそんな小説を書かれた安部真知夫人は嫌だったろうが、だからみな遠慮してハッキリ言わなかったのかもしれない…

全員一致は無効

アマゾンレビューで割と多くの人が書いているのにみな五点か四点である時に、私は一点をつけることがある。もちろんダメだと思ったからだが、わりとこれは積極的にやっている。多数の一致は疑わしく、少数意見が大切だと思うからだ。 イザヤ・ベンダサンの『…

文藝家協会ニュース編集後記

日本文藝家協会御中 いつもお世話になっております。会員の小谷野です。 「協会ニュース」の二月号が届きましたが、編集後記が気になりました。遣唐使廃止か ら明治維新まで日本が他国と無交渉だったなどというのは事実ではありません。日宋貿 易もあり北宋…

先崎彰容VS安藤礼二

全然知らずにいたのだが、昨年『新潮』で、安藤礼二が「先崎彰容への公開質問状」(敬称なし)を書いて、翌月先崎が「安藤礼二氏の質問に答える」を書いていた。右翼同士で何を争っているのかと思ったら、先崎が「天皇と人間 : 坂口安吾と和辻哲郎 」で、天…