2015-08-01から1ヶ月間の記事一覧

先日の栗原裕一郎との芥川賞対談は、「読書人」にイベントスペースができたからそこで、という声から始まったのだが、私が場所を言うと、妻が、それは「らかぐ」のことじゃないのか、と言う。これは新潮社が自社近くに作ったホールで、もちろんそんなもので…

高野史緒さんの何かの本のあとがきに、クラシック音楽を学ぶのにバッハやベートーヴェンから聴かなければいけない、などということはないし、文学を学ぶのに聖書やシェイクスピアから読まなければいけない、などということはない、映画音楽から入ってもいい…

『ひどミス』に、『少年ジャンプ』に、素人が投稿したひどい漫画が載ってしまった話を書いたが、『サザエさん』にもこれと似たひどい回がある。サザエさんが夏みかんか何かを食べて、「おー、すっぱい」と言っていて、三コマ目でワカメちゃんに、「ちょっと…

尾崎一雄の随筆集『ペンの散歩』には、志賀直哉の「大津順吉」を、若い頃私小説と知らずに読んで、それでも感銘を受けた話のあと、こういう文章が続く。 「私小説」(ならびに所謂「心境小説」をも)まるでインドのアンタッチャブル階級視する世の批評家諸氏…

『大江と江藤』で橋川文三に「ぶんぞう」とルビを振ったのだが、これが「ぶんそう」とされているのは知っていて、しかし実際に「ぶんそう」なんて呼んでいた人はいまいと思い、『日本近代文学大事典』でも「ぶんぞう」だし、「ぶんそう」と振るのはなんか半…

小説で雨が降る

大学時代、「児童文学を読む会」で宮澤賢治の「ポラーノの広場」をとりあげた読書会があったのは1984年5月10日、私が英文科に進学したばかりの時である。間違えて戯曲「ポランの広場」を読んできた人もいた。出題者(レポーター)は今名古屋大教授のフィンラ…

プクステフーデ?

アマゾンで高野史緒さんのコメントをいただいたので、デビュー作『ムジカ・マキーナ』を読んでみた。ハヤカワ文庫版である。1870年頃のヨーロッパを舞台にした音楽SFで、登場人物が時どき変な方言をしゃべる。「だけんど」と三河弁が入り、そのあと大阪弁…

「モデル小説でウソを書いてはいけない」というのを書いたが、あのタイトルは分かりやすくしただけで、たとえば名前を変えるのは当然として(ただし檀一雄の『リツ子』のように実名でも小説にはなる)、場所を変えるとか時間をずらすとかいうのはありうる。…

私大生

大江健三郎の出世作にして初期の代表作である「奇妙な仕事」は、私は二番煎じの「死者の奢り」や芥川賞受賞作「飼育」より優れていると思う。 その中に「私大生」とあるのが、どうも私大出身者の反感を買っていたらしく、岡庭昇なども批判していて、岩波文庫…

モデル小説でウソを書いてはいけない

昨年6月11日のことである。小林拓矢からの紹介だと言って、某出版社の若い編集者から企画の打診があった。渡辺淳一論を書いてほしいというのである。私はそれ相応に関心があったので、18日に編集者と浜田山で面談し、書く方向で話は進んだ。編集者は、社内で…

西尾幹二に名誉毀損で訴えられたという中川八洋の『脱原発のウソと犯罪』を図書館で借りてちらちら読んだら、確かにむやみと口汚くかつ「コリアン宮台真司」とか根拠もなく書いているのだが、おおむね首肯できる内容であった。しかしそれなら江藤淳も批判し…

「お前」と呼ぶお前は

『ペリーヌ物語』の主題歌で「お前を見守る星が」とある。ペリーヌを「お前」と呼んでいるこれは何者であろうか、ということが気になって、主題歌における「お前」について考えた。 歌謡曲なら、男が女を「お前」と呼ぶことはある。 ほか『母をたずねて三千…

正かな正漢字で書かないわけ

http://yondance.blog25.fc2.com/blog-entry-4227.html 「本の山」の土屋君が私の恥ずかしかった話を書いてくれているから、サービスしてもう一つ恥ずかしかった話。 私が進学した大学院は「右翼」教授が牛耳っており、中に小堀桂一郎先生がいた。小堀さんは…

一人芝居

『このミステリーがひどい!』に出てくる中学時代の同級生で「マゴベエ探偵団」の録音を渡してきた男とは、教育実習で一緒になった。彼はどこの大学だったか、國學院とかそんな感じで、国語の教師だった。彼は大学で演劇活動をしていて、それは中学時代から…

『火車』と宇都宮健児

『火車』の筋を間違えていたらしい。これは2000年に出した『軟弱者の言い分』ですでに間違えていたのだが、あれはカード破産した女が別の女を殺してその女になりすます話ではなく、別の女を殺してなりすましたらその女がカード破産していたという話だった。…

「本の山」の土屋くんがやたらとひろさちやを読んでいるので、私も図書館で何冊か借りて読んでみた。すると、基督教も仏教も恋愛なんか勧めていない、むしろやめろと言っている、などと正しいことの書いてある本もあったが、いい加減な本もあった。『どの宗…

http://301.teacup.com/hikagemono/bbs/4436 こんなのがあったのだが、「S先生」って誰だろうなと考えたら島津忠夫であろうということになった。島津の著作集は大阪の和泉書院から出ているが、おぼめかすために京都にしたのだろう。