2015-07-01から1ヶ月間の記事一覧

モデルは誰?

川口松太郎の『鏡台前人生』(産経新聞社、1970)は、1969年から70年産経新聞に連載された長編である。ここでは、昭和戦前期における、若宮様と藤間流の舞踊家との恋が描かれている。宮様は、明治維新の時に京都から動かなかった二条宮の貞親とされ、父の大…

島田清次郎

佐藤春夫の『更生記』を読んだ。1929年に福岡日日新聞に連載されたもので、島田清次郎事件をモデルにしているという。しかし結構入り組んだ作で、大場という学生が、夜中に鉄道線路で横たわっている女を見つけて連れ帰る。大場には三十過ぎた時子という姉が…

Old Dreamers

先日、江藤淳に関する鈴木孝夫の記述を読んだついでに、鈴木と田中克彦の対談本『言語学が輝いていた時代』をのぞいてみた。田中は左翼、鈴木は保守派とみられているが、田中がかねてチョムスキーを批判しているのは有名だが、鈴木もチョムスキーに批判的で…

凍雲篩雪(六月)

『文學界』の「新人小説月評」は、昨年後半期を阿部公彦と福永信が担当し、半年ごとのベスト5では、二人とも私の「ヌエのいた家」をトップにあげた。だが受賞は小野正嗣であった。そして小野の作品の『文學界』での書評で阿部はこれを賞賛し、ついで『ヌエ…

http://blogs.yahoo.co.jp/vraifleurbleu39/36704814.html 山下晴代さんは昔から、私の私小説の定義を認めないと言っているのだが、では山下さんはどう定義するのかということを一向に言ってくれない。今回「小林秀雄派」などと言い出したが、小林の「私小説…

谷崎潤一郎の隠し子?

『新潮45』八月号に、中村晃子(てるこ)「私は谷崎潤一郎の孫かもしれない」が載っている。著者は江尻雄次の妻須賀の孫である。 大正元年、汽車恐怖症のため大変な思いをして東京へ帰ってきた谷崎は、母の姉の持つ旅館真鶴館に滞在したが、そこの主で従兄の…

新刊です

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しりすごみ?

こないだからディケンズの『骨董屋』をちくま文庫の北川悌二訳で読んでいる。もとより、『キルプの軍団』の下敷きになったやつで、映画化されたのは観たのだが読んではいなかった。「さすらいの少女ネル」の題でアニメ化されたこともあるが、観てはいない。…

手下の遠吠え

http://www46.atpages.jp/mzprometheus/free/13266 今さら梅原猛批判でもなくて、『水底の歌』なんてトンデモ本なのは常識に属することで、日文研以外の国文科で梅原猛なんか持ち出したら袋だたきに遭うこと必至なんだが、この人は私の本を読んだことがない…

愛と執着

暑い中駒場の図書館へ行き、用を済ませてふと『日本近代文学』という学会誌(前世の遺物)を見たら、高根沢紀子(立教女学院短期大学准教授、埼玉大卒、日大修士、成蹊大博士中退)が、あのMの愚書川端論を紹介するのに、私の川端伝を引き合いに出して「両者…

新刊のようなもの

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