2015-04-01から1ヶ月間の記事一覧

金井美恵子先生の『一冊の本』の連載で触れられていて、すでに一度述べていたので、『日々のあれこれ 目白雑録4』に入っている話なのだが、ある文学賞の選考会で、候補作の中に、主人公が戦時中、戦争が終わったらヘンリー・ミラーの『セクサス』を美しい日…

『en-taxi』に佐伯一麦と坂本忠雄の対談が載っていたのだが、これがどうも変であった。佐伯の『渡良瀬』を坂本が絶賛するのはともかく、田中和生をひきあいに出したり、それもともかく、「私小説で長編小説って、まずはありえないんですから」と言っているが…

文藝評論家哀史

私は積極的には「文藝評論家」と名のらないのだが、これは、新聞の文藝時評もやったことがなければ、『文學界』以外の文藝雑誌に一文字たりとも書かせてもらったことがないからである。 文藝評論家というものの地位が定まるのは戦後のことで、そのメルクマー…

島尾敏雄、桐野夏生、畔柳二美

桐野夏生の『IN』(2008)は、桐野自身の編集者とのダブル不倫を振り返りつつ描き、その間に、タマキという名になっている女性作家が、島尾敏雄の『死の棘』の愛人の正体を探っていく疑似私小説である。『死の棘』は、もとより長編私小説の傑作である。作中…

http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20100503 勝又浩の件で、車谷長吉についても疑問があるのだがそれはここに書いておいた。しかし和解には秘密条項つきというのがあって、和解のうちこれこれについては明かしてはいけないということになっている。それでど…

鴻巣友季子新訳『風と共に去りぬ』(新潮文庫)が図書館にあったので借りてきた。冒頭の部分は、 スカーレット・オハラは実のところ美人ではなかったが、たとえばタールトン家の双子がそうだったように、ひとたびその魅力の虜となった男たちには、美人も不美…

『俺の日本史』刊行前祝いで『俺の空』を読んでいるが、これは全巻巻末に誰かの言葉が二ページ入っている。少年漫画ではよくあることだが、顔ぶれが豪華である。 1,松本正志(映画化の監督) 2,今東光 3,野坂昭如 4,小野耕世 5,富島健夫 6,嶋岡…

卑怯なり勝又浩

『季刊文科』64号は「私小説の力」を特集しており、勝又浩が西村賢太と対談している。中で勝又が、今の私小説作家として、佐伯一麦、賢太、小谷野敦をあげる人がいて、小谷野には意外だったが、車谷が落ちたんだなと言い、賢太が、書いてないから、と答える…

著書訂正

『私小説のすすめ』 56p「ワイド版岩波文庫『道草』(二〇〇八年)」→「岩波文庫『道草』一九九〇年」 - 片岡みい子さんから、『たいへんよく生きました ぬか風呂サロン闘病記』(論創社)が送られてきた。片岡さんはロシヤ語の翻訳家かと認識していたが、…

『ハイジ』続編の驚くべき話

京大の川島隆さんからヴィスメール『ハイジ神話』を送っていただいた。シュピーリの『ハイジ』をやや批判的に論じたもので、ドイツ語訳から川島さんが訳したものである。 驚いたのは、『ハイジ』には、シャルル・トリッテンの『それからのハイジ』『ハイジの…

「立ち上げる」と言語学

http://ameblo.jp/mangetsuhakase/entry-12009136470.html えーとこれはですね。 だいたいなんで言語学者がきっちり説明しないかというのがあって。 なぜなら言語学者が説明するとむちゃくちゃ難しい話になるからである。さらに統一見解はたぶんできていない…

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