2012-04-01から1ヶ月間の記事一覧

ウルトラマンの顔

初代ウルトラマンには三つの顔がある。それじゃダダだが、ご承知のしわしわの初期のやつと、口が妙に広くて堂々としたやつと、口が狭いやつだ。 帰ってきたウルトラマンは、一見初代と同じ顔に見えるが、違う。目が優しいのである。あの優しい目がいい。

論文作品主義

仮に名づければ「論文作品主義」とも言うべきものが、人文学社会科学の一部を毒している。特にひどいのが文学の論文で、ここでは何を明らかにしたか、ということを明快に述べるのじゃなくて、何か論文自体を文学作品みたいに仕立て上げようという意図を持っ…

無限抱擁

滝井孝作の『無限抱擁』は、二十年くらい前に読もうとしてあまりに読みにくいのですぐ挫折した。最近誰かが、『無限抱擁』がいいというので、もういっぺん読もうとしたが、やはり読めない。私小説なのに、日本語がとても尋常ではないのである。よくこんな摩…

栗本慎一郎「自由大学」

栗本慎一郎が有明教育芸術短大学長になった。まあ、聞いたことのない短大で、三年前に開学したらしい。よくこのご時世にと思うが、脳梗塞で倒れた栗本氏に対しては、お元気で何よりと思う。ところがこれをツイッターに書いたら、「今さら学長なんて」という…

ドウガネチビマルトゲムシ シシガシラキクザルガイ 逆立ちしたローランドゴリラ ソメワケササクレヤモリ ファウストハマキチョッキリゾウムシ ミツユビハナナガハリモグラ レッサーパンダとレッサービークトホエール

独身男女の差

『大学ランキング2013』が届いたので、私が怨念をこめて書いた部分を見たら、すぐ後ろに佐伯順子先生が女性大学教員について書いていた。最近、五十前後で女性学者が亡くなることが多い、とあるのは菅聡子先生のことか。佐伯さんはそれを過重労働が原因とい…

西沢あさ子のこと

先日、川西政明が『週刊新潮』の掲示板で、西沢隆二(ぬやまひろし)の妻だった西沢あさ子(本名・渡辺芳子)を知らないか、と書いていた。あさ子は隆二との夫婦仲が悪化し、一時期佐多稲子と同居していて、そこへ佐藤春夫が乗り込んで、西沢をとるか自分を…

『近代生活』1931年4月「雑誌及編輯者批判(座談会)」 龍胆寺雄 若草は女の子だけでなく、文学青年相手の、ちよつと文学時代を更にジャナリスティックにやつた行き方だ。 『新潮』1932年10月座談会「純文学の危機に就いて語る」

「監督失格」という映画を観て、ホントーに監督失格だなと思った。以下アマゾンに書いたレビュー。 目玉は要するにカメラで撮影していたら林由美香が死んでいるのを発見してしまい、その時母親も一緒だったという映像。しかし遺体は写っていない。それ以外は…

久島海の父親

『en-taxi』、もう届かないかと思っていたら届いた。巻頭の匿名コラム、「オヤッ」とか書いているのは坪内祐三だろうが、これはいい。小林祥一郎という元編集者の本を紹介し、阿部謹也が「ハメルンの笛吹き男伝説の成立と変貌」を『思想』に載せた時、平凡社…

蔑称としての「L文学」

あれは私がまだ明治大学で教えていた頃だが、斎藤美奈子が「L文学」というのを、「J文学」に倣って冗談で雑誌で特集したら妙に評判が良かったので『L文学読本』というのを出したことがあった。まあちゃんと読んではいないのだが、女性作家によるフェミニ…

澤地久枝『密約』

澤地久枝『密約 外務省機密漏洩事件』を岩波現代文庫で読んだ。中公文庫で読みたかったのだが、そちらのほうが高値だった。帯に「付 沈黙を解く(2006年6月のあとがき)」とあるから、何が書いてあるのかと期待したが、別に何も書いてなかった(に等しい)。…

むかし、米国在住の女性日本文学研究者が、自分は昔アメリカへ留学してヘンリー・ジェイムズとかをやろうとしたら、君は日本人だから日本におけるヘンリー・ジェイムズをやれ、と言われて嫌だった、という話を、ひとつ話のようにしていた。いつもこの話だな…

http://prime.4403.biz/20120327/%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%96%E3%82%8B%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E6%95%99%E5%93%A1%E3%81%AE%E5%AE%9F%E6%85%8B/ そうなのか。私は阪大時代、週に一回くらいは独身の同僚とカラオケ行ったりしていたが、結婚すると孤独に…

川田宇一郎『女の子を殺さないために』(講談社)を読んだが、予想通り、ダメだった。で、これを書くかどうか思案した。この人は23歳で群像新人賞優秀作になっており、それから16年たって初の著書が出たことになる。大学院にいたからこれは筆名でもしかした…

陰険な武藤康史

講談社文芸文庫の里見とん『荊棘の冠』を見たら、またしても巻末の文庫一覧から、中公文庫の『毛小棒大・木霊』が抜けていた。まったく武藤康史、どこまで陰険な男なのであろうか。それで文芸文庫編集部へ電話して苦情を言ったら、編集長氏は、まったく知ら…

「ローマを見た」を観たい

1989年に上演された山崎正和作のミュージカル「ローマを見た」をもう一度観たい。全部というのではないのだが、冒頭と最後に出てくる合唱と踊りだけ観たいのである。あれは毎日放送主宰だったし録画していたからどこかにあるはずである。中央に、昨年亡くな…

「平成」はやめてくれ

私はれっきとした天皇制廃止論者であるが、それは別にしても、年次を平成で書くのはやめてほしいといつも思う。文章を読んでいて、平成五年とか書かれるたびに、1993年、と西暦に換算するのである。丸谷才一先生だって、元号は廃止すべきだと言っている。戦…

落ち行く人

『雄辯』1918年4月号に出た久米正雄作「落ち行く人」は、菊池寛の代作である。一高の寮生活が描かれていて、杉野という名で久米も出てくるが、主人公は相馬秀夫といい、父が謹厳なキリスト教徒で秀夫自身もそう、眉目秀麗な美男子だが、周囲の山岡とか杉野…

匿名志願者の奇妙な言い分

著書訂正 どこに書いたか確認できないのですが、古井由吉が芥川賞をとった後で立教大学を辞めた、といった記述があったら、間違いです。古井が大学を辞めたのは1970年3月、芥川賞をとったのは同7月です。 - 匿名志願者ってのは奇妙な言い訳をするんだよね。…

郵便局へ行ったらATMが混んでいた。待ち椅子三つが埋まりさらに二人立っていた。私の前の、六十くらいのおじいさんが、座る時、「あの、私の次が、あっちにいるあのお兄さんなんで」と言った。見ると、カウンターの向かいの椅子に腰かけて、何やら大声で…