2011-07-01から1ヶ月間の記事一覧

「誕生日」の謎

私が子供の頃、「みんなのうた」で「美山の子守唄」というのを聴いた。 ねんねしなはれ 今日は二十五日 明日はこの子の誕生日(たんじょうにち)よ ホホー というはじまりである。そのあとで「宮参り」をするという歌詞になる。 のちに、前近代において誕生…

謎の島為男

こないだ参照した『宮本百合子』の著者の島為男という人が、生年は国会図書館で分かったのだが、経歴や没年が分からない。著者紹介欄にも著書が並んでいるだけ。1990年という、おそらく島がもう死んだあとに復刊されたのであろう日本図書センターの『夏目さ…

オルビーのシルヴィア

私は英文科で最初の年エドワード・オルビーで卒論を書いた。もちろん『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない』を読んで激しく感動したせいだが、どうもそれ以外のオルビーの作品はいまいちだったし、ちょっと相談した英作文の沼沢先生もそう言っていた。当…

トルコ風呂の発祥

トルコ風呂というのは、今ソープランドと呼ばれるものについては、1951年の東京温泉が最初と言われているが、これも当初はただ女が垢すりをする、というものだった。 『日本国語大辞典』を見ると、それとは違うアングルの「トルコ風呂」のようないわゆるサウ…

わが本の運命

私のところへ、本が送られてきたりする。その多くは、現在かなりのスピードでブックオフへ行く。むろん、知らない人の本を編集者が送ってきたものの多くは、中も見ずに直行であるが、知人から来たものですら、一か月ほどの運命である。むろん、持っていたい…

(久米正雄伝補遺) 島為男(1891-?)『宮本百合子-抵抗に生きた大正精神』(桜楓社、1967)に「久米正雄の百合子へ書いたラブレター」という節がある。久米が百合子へ恋文を書いて、中条家から出入り差し止めになったことは、有名な話、とあるが、当時は手…

匿名批判は卑怯である

http://news.livedoor.com/article/detail/5723784/ これがどういうシステムのものなのか知らないのだが、匿名といっているからには「深沢明人」というのは変名なのだろう。 匿名での批判が卑怯であるというのは「常識」である。新聞の投書欄でも、本人のプ…

和田芳恵『暗い流れ』と私小説

ちょうど大学院浪人をしていた頃、バルザックの『従姉ベット』を読み終えて、あまりのすばらしさに部屋の中をうろうろと歩き回ったものだが(ただしそれ以外のバルザックの小説で、ここまで感動したものはない)、和田芳恵の『暗い流れ』を読んで、久しぶり…

井村君江年譜

私の先輩に当たり、幻想文学方面では「フェアリー・マザー」などと呼ばれた井村君江先生だが、明星大学退任の時に病気だったせいか年譜が作成されずじまいだったので、文献を調べて作成した。ウィキペディアに何だかファンの編集がしてあり、当時としても異…

稲垣眞美『旧制一高の文学』

前に、成瀬正一を成瀬正勝と混同している件で触れた稲垣眞美の『旧制一高の文学』を通読した。稲垣(1926- )は自身東大卒のため、一高にいた竹内敏雄などから思い出話を聞いたりしており、その他いろいろ教えられるところはあった。ただ哲学や詩の話題が多…

『滝山コミューン』の衝撃

原武史の『滝山コミューン』は、刊行当時評判がよく、講談社ノンフィクション賞も受賞し、原としては三つ目の賞になった。呉智英さんも褒めていた。ただ書評などを見ても、私には興味が湧かなかった。このたび古本を購入して目を通し、やっぱり自分とは無縁…

「週刊現代」のインチキ取材

6日のことだが、『週刊現代』の高堀という記者から電話があった。震災後、私がストレスからお菓子類を食べ過ぎて太ってしまい、それをやめて散歩も始めたというブログ記事http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20110610 を見ての電話だという(もっとも後で、…

ディケンズのホモソーシャル

ディケンズの『大いなる遺産』の佐々木徹による新訳が角川文庫から出ている。佐々木という人は京大英文科の教授なのだが、54歳でまだ単著がない。『大いなる遺産』なんて翻訳がたくさんあるものを訳していないで著書を出してほしいものだ。その点、広野由美…

なんだこいつ・・・

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20110714-00000302-newsweek-int 言っている内容は割とどうでもいいのだが、こいつ、バカではないかと、読んでいて思った。公家みたいな名前だが筆名らしい。 「学生の専攻に取って意味のある」「とって」だろう。…

恋愛史論の「ドーダ」

13日記す。『週刊文春』の見開き自由書評欄で池澤夏樹が渡辺京二の『江戸という幻景』をとりあげていた。2004年弦書房刊である。そしてその一節を引用しているのだが、近世の人間は恋愛において、オンリーユー、フォーエヴァーということはなく、あれからこ…

喜多迅鷹の謎

前に触れた東大卒業予定者名簿というのは、延々留年している人は毎年載っていて、私の時のには、宮城聡がまだ載っていた。ところで独文科に喜多迅鷹という人の名があり、それが出身校が浦和一女になっている。その後、喜多迅鷹という名は翻訳家として、夫人…

堀田善衛の窃盗

「夕刊読売」1950年10月24日(火曜) 「芥川賞候補が窃盗」 二十三日夜九時四十分ごろ品川駅第六ホームで積込み準備中の手荷物からトランク一個をかっぱらって逃げようとする男を同駅荷物手斎藤善勝(二四)さんが発見、追跡して捕え水上署に突き出した。調…

『久米正雄伝』校正

読者の方70代から『久米正雄伝』の校正漏れを送ってきた。けっこう漏れるものだなと思う。46p「大学の勉強に嫌気がさして」→「大学の」はトルツメ 60p「久米のこの主の」→「種の」 71p「大阪朝日新聞」→「東京朝日新聞」 93p「高等女子専門学校」→「高等…

美空ひばりと韓国

こないだ、輪島裕介氏のすばらしい新書を読んで、しかしながら、二十年ほどでずいぶん認識は変わるものだと思った。 私は学生時代、日本家庭教師センターというところに登録して、かれこれ五年近くも一人の生徒の家庭教師をしていた。これはふくろう博士とみ…

ネタが割れる

東大文学部宗教学で今年から准教授になった藤原聖子という人の岩波新書を読んでいた。日本の「倫理」の教科書における宗教の扱いにいちゃもんをつけて、諸外国より公正ではない、と言うのだが、どうしてもいちゃもんにしか見えない。だいたい、諸外国といっ…

身がわり

といっても有吉玉青の本のことではない。私は有吉玉青は、美人だし東大大学院だし、文章も割といいし、好きなのであるがあまり決定打がない。 それはいいとして、先日いきつけの図書館で予約した本を受け取るとき、菊版くらいの本の大きさのものをピンクの、…

大学の裏シリーズ

前からいろいろ書いているのだがなかなか浸透しないのでまた書く。 学者の履歴で「博士課程修了」と書いてあっても、それが1995年以前のものだと、嘘であることが多い。というのは、それ以前は人文系で、大学院にいて直ちに博士号をとるということがあまりな…

パヴェーゼに挫折する

パヴェーゼの『故郷』が岩波文庫に入ったのを買っておいたのを読もうとしたら、冒頭から、大変読みにくい文章であったから、先に訳者の解説を読んだ。すると、こちらも読解不能であった。パヴェーゼがファシズムの下で苦しんだことは分かった。だが、そのこ…

『ナニカアル』を読んだ

桐野夏生の『ナニカアル』を数日前に読んだ。これは久米正雄が出てくるので、読売文学賞をとったころに購入して、久米関係のところだけ見た。 戦時中の林芙美子の、インドネシアでの恋愛を中心としたものだが、昭和12年の漢口一番乗りで、芙美子が久米を出し…

http://www.bunka.pref.mie.lg.jp/art-museum/gakugei/inoue/geijutsu_shinko.htm 「至上命題」出ました。その上「女史」って何だよ、こいつ。 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110701-00000079-mai-soci 人文系では珍しいな。この人、2000年にヴィトゲ…