2011-06-01から1ヶ月間の記事一覧

中村健之介のドストエフスキー

鹿島茂は延々と「ドーダの文化史」だか何かを『一冊の本』に連載し続けていて、最初は面白かったのだが、これって何にでも適用できてしまうので、近頃は読んでいなかったが、ふと覗いたら小林秀雄で、小林はあれもダメこれもダメと否定しておいて、自分の母…

不変態学者

昆虫は「変態」というものをする。幼虫から蛹、成虫へと。しかし、これには三種類あり、「完全変態というのが、この三つをすべてへるもので、鱗翅類、つまり蝶や蛾がそうだ。対して「不完全変態」は、蛹の段階がないもので、カブトムシなどの甲虫、その他多…

肝は言わない

その昔、猪瀬直樹の『ミカドの肖像』が出たとき、一読して興奮して友人に電話をかけて、こうでこうでとしゃべったら、後で、読んだけど面白いところは全部あんたから聞いてしまっていた、と言っていた。 で岩波文庫で品切れになっている高村光雲の『幕末維新…

社会学者

http://miura.k-server.org/newpage1119.htm 上野千鶴子や宮台真司を槍玉にあげて、社会学を撲滅せよと書いたら、小谷野敦氏からあんなのは社会学者じゃないのだとご批判を受けたけど、いや、この内田隆三をふくめ、ああいうのが社会学者なんだと思う。だい…

どこか出さないか

久米正雄選集第一巻 破船 第二巻 学生時代・学生徒歩旅行 第三巻 手品師・痴人の愛 第四巻 山鳥・木靴 第五巻 天と地と 第六巻 晴夜・龍涎香 第七巻 二階堂随筆・四芳堂駄話 第八巻 (予備) 別巻 憂鬱な愛人(松岡譲)

藝術家と伝記

福田和也や坪内祐三が言うほど斎藤美奈子がひどいかどうか、新聞の文藝時評だけでは分からない(だいいち朝日をとっていないから毎月読んではいない)のだが、続けて届いた『Scripta』と『ちくま』の連載を読んで、やや迷走しているなあと思った。 『Scripta…

上田高弘の物言い

三日ほど前だが、ツイッターで、『久米正雄伝』を褒めつつ、『母子寮前』のような愚作は書かず、こういうものを、と書いているやつを発見した。見ると実名で(えらいえらい)上田高弘というやつだが、美術批評家で立命館大の教授、1961年生である。2006年に…

近松門左衛門と坂田藤十郎

中川右介さんとの公開対談も無事終了したが、一つ気になったことが積み残しになっていた。中川さんの『悲劇の名門團十郎十二代』で、坂田藤十郎(初代)が近松門左衛門と協力して上方の和事歌舞伎を完成させた、とあったことだ。 この記述は、おそらく小坂井…

ホワイトさんが好き

ユーチューブあたりで、アニソンを歌い続けているホワイトさんが好きである。「ホワイトぐみ」というのかと思ったが、いろいろ名前があるらしく「ホワイトハル」というのもある。 http://utauga.jp/utablog/?contents_id=uta0055061 http://utauga.jp/utablo…

阿川尚之

阿川尚之といえば、慶大教授で阿川弘之の息子であるが、かつて反米論議が盛んだったころ、『アメリカが嫌いですか』を上梓した。その頃新聞紙上で阿川の、米国は黒人公民権とかゲイ問題とかそういう民主主義の諸問題を先どりして解決してきた国だという論説…

二人のフラナガン

ダミアン・フラナガンという人の、『世界文学のスーパースター夏目漱石』という本を見つけたので、何だ何だと思って読んでみた。フラナガンは1969年生まれ、日本へ来て漱石の魅力にとりつかれ、90年代に神戸大学大学院に学び、2000年に漱石へのニーチェの影…

女の私小説

『本の雑誌』7月号で北上次郎氏が私の『久米正雄伝』の書評を書いてくれている。ありがたい。 それはそれとして巻頭には、岡崎武志と荻原魚雷の私小説をめぐる対談があって、これにちょっと引っかかった。どうもやはりお二人とも、私小説を狭くとらえるか、…

砂糖と塩

昨年秋から、ダイエットのため夜の散歩をしていたのだが、景気をつけるために金剛杖を突いてちゃりんちゃりんやっていたから、人けのない夜十時過ぎにやっていたが、やはり時おり遭遇する人には奇人と見えただろう。 ところが震災後の放射能騒ぎで散歩をやめ…

苫米地英人よどこへ行く

苫米地英人が『洗脳原論』で登場した時は宮崎哲弥も絶賛したものだが、私は読まなかった。 ところがそれから数年たつうちに、苫米地は大量の「あやしい本」を書く人になっていた。しかし、いくら題名やら出版点数の多さが怪しそうでも、中を見ないで何か言っ…

「ボドレール」発見

かつて吉田秀和は「フォーレ」というのはおかしい、「フォレ」であると言い、フォレと書いていた。それで私もフォレと書く。ところがそうなると「ボードレール」もおかしいではないか、と人から言われ、それならと「ボドレール」と書いた。すると校閲がチェ…

また新刊です

たまたまこの時期重なっただけで、この後はしばらく途絶えます。猿之助三代 (幻冬舎新書)作者: 小谷野敦出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2011/05メディア: 単行本 クリック: 11回この商品を含むブログ (14件) を見る訂正: 5p「十五代目中村歌右衛門」→「六…

サザエさんの哀しみ

昔は「漫画」といえば、笑いながら読むものと相場が決まっていた。漫画の中で登場人物が漫画を読んでいると、記号的に笑っていたものだ。もちろん、今では様変わりしたが、それでもまだ基本的に、漫画の主人公というのは「失敗」をして笑われるものというこ…

「急逝」の使い方

「癌だましい」で文學界新人賞を受賞した山内令南が、5月19日に52歳で死去した。新人賞史上、こうした例は聞いたことがない。末期の食道がんであることを描いた小説(タイトルは河合隼雄のもじり?)なのだから、早晩起こりうることだった。 朝日新聞の文藝…

大丈夫ですか司馬遼太郎先生

塩澤実信の『雑誌記者池島信平』を読んだ。遺族に取材したちゃんとした伝記なのだが、池島自身が常識人すぎて、そう面白くはなかった。さてこれは93年の文春文庫版で、最後に司馬遼太郎の解説がついている。しかしどうも、司馬らしくない、おちつきのない文…