2011-03-01から1ヶ月間の記事一覧

ボストニアンズ

ヘンリー・ジェイムズの『ボストニアンズ』を、谷口陸男の訳「ボストンの人々」(中央公論社・世界の文学、1966)で読んだ。長いので四日もかかってしまったが、面白かった。ジェイムズというのは、英米文学者の間での評価は高いのだが、日本では一般にはあ…

広瀬和生著について

広瀬和生『落語評論はなぜ役に立たないのか』(光文社新書)についてのアマゾンレビューがえらく波紋を呼んでいる。私としてはかねてこうした、現代の落語家を生で聴かなければいけないという最近の風潮について疑念を抱いていたので、一年以内に新書判くら…

社会学と経済学

赤枝香奈子(1971- )の京大博士論文『近代日本における女同士の親密な関係』が届いたが、うーん五千円も出すほどのものではなかった。 とにかく序論から、近代になって恋愛は出来ただの、恋愛の起原はトゥルバドゥールだのと古臭い今では無効の説を展開して…

シミオナートをシオミナートだと思っていた人がいる

武谷なおみの『カルメンの白いスカーフ シミオナートとの40年』(白水社、2005)の冒頭に、1956年初来日したイタリア・オペラを聴いた谷崎潤一郎が、オペラがあれば歌舞伎は要らないと言い、アイーダの行進曲を口ずさんみ、シミオナートを礼讃していた、と松…

奇書

塚本康彦(1933− )の『ロマン的人物記』(明治書院、1998)をある関心から図書館で借りだした。塚本は古典日本文学専攻の中央大学名誉教授だが、後年は近代文学について多く書いた。そしてこれは、同人雑誌『古典と現代』に載せられた、祖父、久松潜一、ド…

http://d.hatena.ne.jp/hananeko51/20110323 こういう人はあちこちにいるだろうが、「日本は市民運動が根付かない」ってそれはどこと比べてなのか、ないし原発をなくせと言いたいのか減らせと言いたいのか。福島がつぶれただけで電力不足になっているのだか…

訂正

「週刊読書人」の「論潮」で、中央公論の新書大賞が昨年までと投票者が変わったと書いたのは間違いでした。小冊子がなくなり、私も寄稿していたのが今年はなかったので勘違いしました。 しかし、新書編集部の人に投票させるが、自社の新書はあげてはいけない…

大波小波のカマトト

これまで謎に包まれていた芸術選奨の選考委員が、peleboさんの努力によって明らかになりました。 http://naokiaward.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/post-9b76.html もっとも、隠していたわけではなくて、授賞式会場で配られる冊子に書いてあったそうで、な…

http://www.kishimoto-fan.com/blog/2011/03/post-52.html むーん、東京にいる岸本さんにそんなに大丈夫ですか連絡があるのか。 まあ私もメール二本くらいはあったが…。 それでまた思い出して不快になるのは、阪神の時は私は池田市にいたから結構精神的にえ…

新刊です

木魂/毛小棒大―里見〓短篇選集 (中公文庫)作者: 里見〓@4CEE@,小谷野敦出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2011/02メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 13回この商品を含むブログ (9件) を見る編纂ものですが、

ジグソーパズル文学を排す

こないだファン・ルルフォの『ペドロ・パラモ』を読んだら、断片から構成されていて、時系列とか語り手とかがばらばらになっていて、再構成すると筋が出来上がるものであった。バルガス=リョサにもそういうのがあったし、ラテンアメリカ文学とか、クロード…

一万三千と三千

『文學界』の相馬悠々は、桐野夏生と角田光代の不遇時代に触れて、不遇な作家を励ましているようである。桐野のエッセイ集『白蛇教異端審問』から、『OUT』を書き始めた経緯が引かれている。『柔らかな頬』を書き直して、なお編集者からダメだと言われた…

内田ジュ先生の最終講義

『文學界』4月号に内田ジュ先生が60歳で定年前に神戸女学院大を辞めるというので最終講義が載っている。何たる華々しさであろうか。 何か、さしさわりのあることも書くなどと言っておいでだったが、別にそんなものはない。温情で学生を卒業させてやったとか…

込み入った話 

金井美恵子先生の新刊エッセイ『猫の一年』は、2006年から『別冊文春』に連載されたもので、私は先日買ったのだが、ぱらぱらと見たらサッカーの話ばっかりで、私は『一冊の本』の金井先生の連載「目白雑録」を、島田雅彦や丸谷才一の悪口を楽しみに読んでい…

かねて妙だと思っているのが、「自分が正しいと信じて疑わない人は困る」とかいう言明だ。というのは、その人が正しいなら、それはそれでいいわけだし、間違っているなら「間違っているのにそれを認められない人」と言えばいい。もちろん、曖昧だということ…

川俣従道(1929− )『川端康成と信州』(1996)の最後のほうに、『事故のてんまつ』事件に触れて、事件の翌年の1977年、臼井吉見が松本の、川端が、井上靖、東山魁夷とともに泊まった割烹旅館「桂亭」で酒びたりになり、女将の鳥羽節子という人が「なんであ…

http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20100520 このサンショウウオ奇談、判明いたしました。佐多みさきの『アナモルフォーズ』(秋田書店)第二巻に入っています。私が見たのは『プレイコミック』でした。なおサンショウウオの名前は「ジロー」。自己解決でし…

ニューギニアのもてない男

田所聖志の「ニューギニアの『もてない男』」という論文を読んだ(椎野若菜編『「シングル」で生きる』(御茶の水書房、2010)。田所氏は1972年生まれ、東大医学部大学院特任助教である。院生時代に『もてない男』を友達と三人で回し読みし、「もてない」と…