2009-01-01から1ヶ月間の記事一覧

私はキネマ旬報ベストテンが発表されると、それらの映画のDVDを借りて観る。それをキネ旬至上主義だの権威主義だのと言う人がいるのだが、それはあくまで「目安」である。もちろん、それ以外の映画を観ないということはないし、もしベストテン映画が下ら…

国民の権利

国会図書館が、著作権が生きている著作のコピーを半分までしか許さないのはよく知られている。しかし、よほどのバカでない限り、国会図書館で全部複写しようとするのは、普通では手に入らない著作物なので、全部複写しても著作権者に損害は与えない。もし現…

「山椒魚」は盗作ではない

井伏鱒二の「山椒魚」、原題「幽閉」(1924)が、ロシヤの作家サルティコフ=シチェードリンの「賢明なスナムグリ」をネタとした「盗作」だということを、猪瀬直樹が『ピカレスク』で書いている。 http://www.japanpen.or.jp/e-bungeikan/study/inosenaoki.h…

まあ利敵行為も何だが、ヨコタ村上のあれは、強姦ではない。研究室へ相談に来た女子院生を押し倒したとか、そこで言い寄ったとかならともかく、あの院生はのこのこ研究室までついていっているのだ。しかもその後、一、二回デートしたとYMは言っており、そ…

改題について

岸本葉子さんの『本はいつでも友だちだった』は、ポプラ社の「新・のびのび人生論」シリーズの一つで、これが出た時新聞で紹介できたのは、当時はめったに自分のことを語らなくなっていた岸本さんの、珍しく暗い子供時代を語ったものであるだけに、ファンと…

私が大学一年の時に一般教養の国文学の授業をしていた延広先生が、授業中ふと、島田一男だか清水一行だか、そういう量産推理作家を愛読していると漏らしたことがある。当時私はもちろん「文学青年」だったから、文学研究者がそういう「通俗小説」を読むとい…

里見伝補遺

『里見とん伝』はおかげさまで好評であります。中で、昭和25年ころ、文士たちが直木三十五の墓参をしたという記述があり、既にお良さんの具合が悪かったことから、25年は直木の十九回忌ではあるけれど疑問があると書きましたところ、「直木賞のすべて」作者…

山田太一のドラマ『男たちの旅路』のスペシャルで「戦場は遥かになりて」というのがあった。1982年。オープニングから、当時大流行の「宇宙戦艦ヤマト」のシーンが挿入される。新入りのガードマン(無名で終った役者)がやたら意気がっているので、例によっ…

貧乏暇なし

「仕事が忙しくて、死にそう」などと言っている人には、仕方がないから「体に気をつけて」などと言うのだが、実際にはそういう状態では気をつけることなどできないことは分かっている。 健康法だのダイエットだの断煙だのというのは、カネがあって暇があって…

週刊新潮と週刊文春

『週刊新潮』で福田和也氏が、またも一番乗りで『里見とん伝』を取り上げてくださっている。福田様ありがとうございます。 対して『週刊文春』では宮崎哲弥氏が、私の写真つきで、羽入辰郎『学問とは何か』について書いておられる。あの本は、折原浩らの批判…

椿事

「2ちゃんねる」に書き込んだ者がすぐに特定できる、ということは実に珍しいことだ。椿事である。阪大言語文化の院生だった者である。 某は、客観的事実以外に主観的事実というものがあると、上野千鶴子のようなことを言い、私は「客観的事実を認められない…

「英語青年」廃刊

110年の歴史を持つ『英語青年』が来月で廃刊になる。全国2万人の英語英文学者たちが、この雑誌に載ることを夢見てきた、そんな雑誌である。蟻二郎が、四方田犬彦が、それぞれに批判してきた雑誌である。自分の文章がこの雑誌に載っただけで、何冊も買って配…

鳥越碧『花筏』への不満

(活字化のため削除) - 1999年か2000年頃、花村萬月が『オール読物』で、川本三郎の批評に腹がたったから自宅を見つけて殺してやろうと思った、とか書いていたが、今なら警察に捕まっているね。もっともこの場合、編集長も逮捕されるのかな。 (小谷野敦)

「侃侃諤諤」よ、どうした

かつて糸圭秀実は、文藝雑誌における匿名時評がなくなってきたことを指摘し、その重要性を述べていたが、私にはそれは疑問で、いくら匿名でもそれを載せている編集長・編集部というものがある以上、仮にからかわれたりした権力者が弾圧しようとすれば弾圧で…

ポーランド文学者・工藤幸雄(1925−2008)の『ぼくの翻訳人生』(中公新書)を読んでいたら、不思議でおもしろい一節に出くわした。工藤は1967年、ユーゴスラヴィア(セルビア)のイヴォ・アンドリッチの『呪われた庭』を重訳した。すると1972年の『ノーベル…

いったいどこから発生したのか、少なくとも最近では小泉に騙された「民営化すればよくなる幻想」である。映画「まぼろしの邪馬台国」にあわせた吉永小百合切手シートを買おうとしたら、映画鑑賞券とポスターとセットで5500円でしか売らないという。映画なぞ…

古屋健三「老愛小説」

『わしズム』にも書いたのだが、昨年八月の『文學界』に載った古屋健三の「老愛小説」は、私が読んだ中では昨年度ベストの小説だった。古屋は、知る人ぞ知る慶大名誉教授のフランス文学者で、60歳になるまで著書は出さない方針で、今は70を超えているから著…

小松茂美のことなど

最近、古典の新訳が流行っているが、はてみなどうやってやっているのだろう。改めて原書を見ながらぽつぽつとやっているのだろうか。それとも以前の訳をスキャンして、原書と照らし合わせながら直しているのだろうか。短いものならいざ知らず、もし私が『風…