私小説と霊界案内

勝又浩の『私小説千年史』は、私小説が日本独自のものだと強弁し、海外にもあるという私の論を無視したものなのでアマゾンで一点をつけておいたら、「papaneko」とかいう正体不明のやつが「和辻哲郎文化賞受賞の稀なる日本文学本質論」とかいう五点レビューを書いていた。どんなやつだろうとほかのレビューを見たら、「霊界案内: 永遠の命が輝く あなたが生まれてきた意味、帰る場所」という奇書に五点つけて、

きたさんの今回の本で一番驚くのは、彼が他の惑星にいた時の経験を記していることです。この4次元時空間の宇宙だけでも1000億もの巨大な銀河があり、それぞれの銀河に1000億以上の様々な恒星と惑星系が存在することを考えれば、霊的にはかり知れない進化を遂げている生命体が多数存在していると考えることは理にかなっていると思われます。まして多次元宇宙を考えれば、その数は無限に近いのではないでしょうか。・・・」

 云々とあったから、勝又浩よ、えらい人に見込まれたもんだなとため息をついたのであった。

小谷野敦