四方田犬彦「夏の速度」(作品社)アマゾンレビュー

フィクションらしいが・・・
星2つ - 評価者: 小谷野敦、2021/04/20
宣伝文句から、今まで秘めて来た実話かと思って手にしたが、あとがきによると、1979年韓国から帰ったあと河出書房の高木有を紹介され、勧められて小説を書いたが、それが単なる見聞記になったのでフィクションを改めて書いた、だがその後光州事件が起こり発表する気を失った。高木はその後作品社に移り、いま改めて刊行を勧めた、というので曖昧なのだが、たぶん第二稿のフィクションのほうだろう。これはヨンチョルという韓国人に連れられて売春街へ行くのだがカバンをひったくられた上、暴行と罵声を受けてカネを渡して逃げ帰るという話で、これがフィクションだとすると、なんでわざわざ韓国人が乱暴で韓国は危険だというイメージをもたらすフィクションを発表するのか、分からなくなるのである。