大岡信編『窪田空穂随筆集』岩波文庫のアマゾンレビュー

2021年2月17日に日本でレビュー済み

 
なぜこれが岩波文庫にはいっているかというと、編者の大岡信の父が空穂門下の歌人で、大岡信も若いころから空穂に親炙し、結婚の仲人を頼み、長男が生まれた時には空穂が「玲(あきら)」と名前をつけてくれたからである、ということが解説に詳しく書いてあり、楽屋うちさらけだしていて面白い。しかし随筆集として面白いかというとそんなことはなく、早稲田の教授を務め文化功労者になった空穂が「名誉とも金銭とも無縁な私学の教員上がりの老翁」などと書いているのは、こういうそらぞらしい卑下が許された時代だったんだなあ、との感慨を催す