雁屋哲の嫌味

 なんでだったか思い出せないが、私は中学生のころ、『ひとりぼっちのリン』という「少年マガジン」連載漫画の第一巻だけ持っていて、くりかえし読んでいた。原作・阿月田伸也、作画・池上遼一である。貧しい家に育ったが足腰が強い少年リンが、逆境の中で競輪選手を目指すというスポ根ものである。

 ここに、リンをいじめる高校生が出てくるが、そのボスが、優等生でイケメンである。高校なのに授業で高等数学を教えていて、その秀才が間違いを指摘して教師があわてるのである。実に難しい数式で、それを「それだと放散してしまいますよ」とか言うのである。

 あとで考えたら、東大で量子力学を学んだ雁屋哲が原作だから、こういう嫌味な真似をしたわけである。