ディケンズ「リトル・ドリット」の錯簡

ディケンズ「リトル・ドリット」の小池滋ちくま文庫第二巻の82pに、クレナムとリトル・ドリットの会話があり、こんな部分がある。

「「他人はともかく、このわたしがこの手紙を受け取ったからといって、あなたが悲しむことはないでしょう」クレナムは相手を安心させようと微笑をたたえて言った。「わたしはリトル・ドリットからすべてを打ち明けられていて、あなた同様なのですから」「いいえ、違うのです。全然違うのです・・・」

 しかし、リトル・ドリットと話していて「リトル・ドリットからすべてを打ち明けられていて」はおかしい。で、ここに注がついていて、ここは

「初版の校正段階で削られてしまって、流布本には出ていない。しかし、この削除は作者が月刊分冊のページ数を超過する分量の原稿を書いてしまったために、不本意ながら行なった削除であるから、ここでは作者の意図を汲んで復活させることにする」

 そうだろうか。リトル・ドリットとの会話で「リトル・ドリットから」などと発言しているから削除したのではないのだろうか。