母の通信教育

私の中学生から高校生の時分、母はNHK学園高校の通信教育を受けていた。田舎の中学校を出てすぐ銀行に勤めたのだ。卒業して東洋大学の通信を受け始めたが、こちらは卒業できなかったようだ。

 高校生の母に届く教材のうち「国語」のそれは、中学生の私も読んでいた。それに付随して副読本も雑誌形態で届いていたが、そこに作品論の連載があり、それを私は面白く読んだ。誰と名のある人ではなかったが、作品を読む目的はテーマを発見することだという明確な目的が記されて、明快な文章だった。芥川龍之介の「羅生門」については、「年長者が悪をなすと年少者がまねをする」というのがテーマだと結論づけられていて、私はその明快さに感銘を受けた。