『内閣調査室秘録』と坪内祐三

 昨年、文春新書から『内閣調査室秘録』という本が出た。佐藤栄作内閣の後期に設けられたもので、保守派の学者・評論家を呼んで話を聞いた経緯を、志水民郎という人が記録しておいたのを、登場人物別に編纂したもので、江藤淳山崎正和中嶋嶺雄、永井陽之介、村松剛見田宗介、関寛治、関嘉彦などで、保守でない人も一割くらいいるが、常連は保守だったらしい。

 別にさほど新しい情報ではないのだが、『みすず』新年号のアンケートで坪内祐三がこの本をあげて、江藤淳がのち山崎や中嶋を批判したのは、お前らが米国に協力したのは自分も知っているぞという意味だったと書いていた。しかし調査室は別に米国機密機関ではないし、佐藤は沖縄返還で米国と密約したというが、それは調査室に来る学者に漏らすようなことではなかっただろう。