「修道女ルチア 辱す」(小原宏裕)中央公論2017年6月

 「にっかつロマンポルノ」が始まったのは一九七一年で、私は小学三年生
だから知らなかったが、日活という映画会社は「大巨獣ガッパ」で知ってい
たから、高校生くらいになって、五大映画会社の一つが、もっぱらポルノを
作るようになったということを知ってにわかに信じられなかった。上野の京
成線入口の向うにも一つあったが、昔はポルノ専門の映画館というのがあり
、需要もあったのだろうが、家庭用ビデオデッキが普及し、アダルトビデオ
が出始めると、当然ながらすたれ、八八年にはロマンポルノは終わった。
 映画評論家には左翼的な人が多く、わいせつは国家に摘発されるから正し
いという倒錯した思想からロマンポルノを称揚する向きもあり、そこから根
岸吉太郎や周防正行のような一般映画の監督も育ったとか、宮下順子や東て
る美も出てきたと言われるが、ロマンポルノ映画自体がそんなに面白いかと
いえば、そうでもない。
 そんな中で私が惹かれたのは野平ゆき(のちユキ)という女優で、前に「
ドラマ主義者宣言」で紹介した天知茂主演の「江戸川乱歩の黄金仮面」で、
スパイを演じていて、潜水服を着て逃走するのだが仲間に撃たれ、明智が前
をはだけると裸の胸が血に染まっているという役を演じた。それから何だか
気になっていたのだが、主演の「修道女ルチア」がDVDになっていたので観た
ら、やっぱり良かった。
 世間には、修道女ないし修道女的な女性が好きだという趣味嗜好の男もい
るようだが、私にはそれはない。この映画は、まあ日本の修道院で、若いヒ
ロインがさまざまにいたぶられて復讐するといったたわいもないものだが、
桂千穂の脚本がうまいのか、わりあい楽しく観られた。
 野平ゆきの、丸顔に野性的な目で、
敵に対峙する姿勢がいいのである。しかしロマンポルノの女優としてはメジ
ャーではないらしいが、それもいい。
 しかし、ポルノ映画からの一般女優への転向はできても、アダルトビデオ
から一般への転向は難しい。墨田ユキなど私は好きな女優だったが消えてし
まったし、飯島愛は自殺してしまった。やはり藝能界での視線の厳しさや差
別があるということだろうか。AV業界自体が揺れているが、女優として素
質を感じる人もいるだけに、そのへん正常化してほしいと思う。