先崎彰容VS安藤礼二

 全然知らずにいたのだが、昨年『新潮』で、安藤礼二が「先崎彰容への公開質問状」(敬称なし)を書いて、翌月先崎が「安藤礼二氏の質問に答える」を書いていた。右翼同士で何を争っているのかと思ったら、先崎が「天皇と人間 : 坂口安吾と和辻哲郎 」で、天皇制廃絶を考えているとして赤坂憲雄と安藤の名を出し、安藤がそれに抗議したということで、先崎は謝罪していた。

 文脈から言って、天皇制のあれこれを認めてその上で廃絶を、ということで、赤坂や安藤が出て来たのだろうが、先崎の頭にはごく単純な廃止論者などはない、ということで、結局議論はこういう「内輪もめ」としてしか起こらないというあたりに時代の闇を見た気がしたよ。(小谷野敦