桂文楽絶句伝説

 名人と言われた先代桂文楽が、落語の途中に人名を忘れて絶句し、「勉強し直して出直してまいります」と言って高座を降り、そのまま復帰せず死んでしまったことはよく知られている。ところがこの話に際して、「志ん生なら人の名前くらい忘れてもいい加減な名前を言って続けただろう」といつも言われるのだが、私はそれはどうかなあ、と思う。志ん生のフラというのは計算されたもので、本当にいい加減だったわけではないのである。