ディケンズは困る

『デヴィッド・コパフィールド』をジョージ・キューカーが1935年に映画化した「孤児ダビド物語」を観た。この邦題もすごいが、まあつまらなかった。

 ディケンズは『荒涼館』が傑作で、「クリスマス・キャロル」と『オリヴァー・トウィスト』が通俗的な意味で面白いのだが、自伝的作品と言われ、モームが世界の十大小説に入れた『コパフィールド』とか、『二都物語』とか『大いなる遺産』とか、日本で有名なものが存外つまらない。

 そのつまらなさはモームにも通じるものがあって、「面白いが通俗だ」と言われたりするが、いやつまらないのである。

 英文学では、18世紀のスウィフトやフィールディングは面白いのに、ディケンズはフィールディングをヴィクトリア朝風に上品にした分つまらなくなっている。私が高校生のころは新潮文庫に「コパフィールド」「二都」「遺産」が揃っていて、読んで辟易した。岩波文庫で出た「コパフィールド」の新訳も品切れだが、「二都」は最近光文社と新潮文庫で新訳が出ている。何が面白いのであろうか。